">

TOOL 4

「君は両親に殺されそうになったんだ。ここにいれば安全だ。その代わり、君には協力してもらいたい」
 
 ここに来て、初めて聞かされた言葉はそれだった。
 そうだったのかと頷いた。
 ここに来る少し前の記憶なんて、よく覚えていなかった。
 
「君には特別な力がある。それを君の両親は恐れ、殺そうとした。君の力は実に素晴らしいものだ。それを理解出来なかったんだよ」
 
 『力』があるのは知っている。機械とかに念じるだけで、自由に動かせた。いつの間にか使えるようになってた。
 電気も無いのにどうして動かせるのかと親に聞かれたことがあったけど、手足を動かすのと同じくらい当たり前のことだから、「わかんない」としか言えなかった。
 この『力』を使うと、決まって親は怒った。怒鳴りながら泣いていた。
 
 
 
 『TOOL』に来てから、2ヶ月近く過ぎた。
 毎日のようにやる訓練も慣れてきた。小さなロボットを遠くから操るなんて、ギガデリックにとってはもう朝飯前の事。最近は、一度に10体くらい操れるようにまでなった。成績をあげる度に、研究員は褒めてくれた。『力』を使うと必ず怒った親とは、全く逆だった。
 “特別な子”…と。そう呼ばれて悪い気はしない。だって、この『力』は他の連中には無い特別なモノで、それを使えるのは自分だけだから。
 ある日、研究員は一抱えはある丸いモノを持って来て、ギガデリックの前に置いた。ギガデリックが、その丸いのに念じると、丸いのはゴロっと動いて、大きなひとつ目を開けた。
「それを、どのくらい性能を出し切れるか、いずれテストさせてもらう」
 そう言って、研究員は部屋から出て行った。
 物と仲良くなるというのも変だけど、ギガデリックはその目玉をとても気に入って、いつも自分の傍らに浮かばせていた。
 
 第11地区は、創設されてからまだ年月が浅く、研究の方向性がまだ漠然としていた。実験体の数は少なく、実験体が暴れるという危険性は殆ど無い。
 そのため、ギガデリックは部屋の外に出る事がしばしばあった。多少強引に…殴ったりもしたが、研究員に外出許可を貰っていた。部屋から出る時は、必ず番号の書いてある紐付きのカードを首から下げるように言われ、邪魔だとは思いつつもギガデリックは仕方なく首に下げた。
 第1地区と第2地区と第7地区に行くことだけは絶対に許して貰えなかったが、他の地区なんかに用は無い。同じ11地区の、地下18階。施設の最端に孤立するようにある部屋にしか、行く気は無かった。
 ギガデリックはフワフワと浮かぶ丸い目玉を従えて、冷たい色をした蛍光灯の並ぶ無彩色の廊下を進む。
 時々すれ違う、研究員の目が気に食わなかった。白衣を着て、色の無いような感情の顔をする。挨拶をするわけでも無く。
 気持ちワリィ…。
 ギガデリックは足を早めて、目的地に急いだ。
 
 
 
「ジェノ兄ー! 来てやったぞ!」
 堂々とオートロックの機械を操って開けさせ、遠慮無しに部屋に入る。
 いつものようにパソコンと向き合っていたジェノサイドが、振り返って頭を掻く。
「ちゃんとドアの前で言ってくれれば、ロック解除するってば~」
「ちっせーことは、気にすんな。ジェノ兄だって、わざわざ開けんのはメンドーだろ? オレが開けてやってんだからいいじゃん」
「それ、屁理屈~」
「うるせ」
 ギガデリックは口を尖らせて、ジェノサイドの隣の椅子に逆に座る。背もたれに頬杖を付いて、パソコンを覗き込む。
 ギガデリックがよくこの部屋に来るようになって、その度にジェノサイドの椅子を奪って座るものだから、最近もう1脚だけ椅子を増やした。
「あれ~? その目玉って・・・」
 ギガデリックの後ろで待機するように浮いている、大きな目玉型メカの存在に気付き、ジェノサイドが声を上げる。
「コイツ、最近オレの部下になったヤツ。まだ、どんなヤツなのか良く解らんねーけどな」
「この目玉ねー、僕が設計したんだよ」
「マジ? ウソくせー」
 訝し気な顔をして、ギガデリックはジェノサイドをじとりと見遣る。
「ホントだよー。凄い機能がいっぱい付けてるんだ。浮かんだ時に、ビックリしなかった?」
「あー、そだな」
 操った時に、普通に浮いたものだから、当り前に思っていたが、良く考えてみれば、ジェットもプロペラも無いのに、静かに浮いているのだから、凄いのかもしれない。
「目からビーム出せるよ。鉄くらいなら溶かせる。あとねー、映像と音声の保存機能とか、電波妨害、疑似空間発生装置、電磁波の・・・」
「はぁ…」
 ニヤニヤ笑いながら言うジェノサイドがいまいち信じられない上に、何を言っているのか解らない単語が続き、ギガデリックはつまらなそうに息を吐いた。
 その様子に気付いたジェノサイドは、言葉を打ち切って、浮いている目玉を撫で始めた。
「シンプルで高機能なのが作りたかったんだ。でもねー、電気の消費が激し過ぎて、結局、放置されちゃってたんだよ~。ギガ君が操るなら電気要らずだから、使ってもらえそうだねー」
「ふーん。ま、オレにしかできねーことなら、もっと褒めろよ」
「うん。エライエライ」
 ジェノサイドは目玉を撫でていた手を、ギガデリックの頭に乗せて撫でた。
 ギガデリックは、はっとしてその手を退けた。
「撫でんなッ」
「んー?」
 心外そうな顔をして、ジェノサイドは首を傾げる。
「子供を褒める時は、こうするんでしょ~?」
 ゴチン。と、ジェノサイドの頭に、拳を下ろした。
「痛い…」
「ガキ扱いしてんじゃねーよ!」
 ほんのりと赤面した顔で、ジェノサイドを睨む。
「あはは~、照れてるの~? 可愛いねー」
 ゴチン! と、さっきよりも大きな音が殺風景な部屋に響いた。
「いったぁ~!」
 ジェノサイドは、ふるふると肩を震わせて首を縮める。
「叩かなくてもいいのに…」
「っせぇ」
 すっかり機嫌が傾いてしまい、頬を膨らませていると、ジェノサイドはそっと顔を覗き込んできた。
「ゴメンね~」
「もー、いいっての!」
「あは…」
 荒っぽく答えると、ジェノサイドは苦笑いを浮かべて顔を引っ込めた。
 ふと、パソコンからポンと音がした。
「あ…」
 ジェノサイドは立ち上がって、入り口のドアに向かった。ロック解除のキーを押して、ドアを開ける。ドアの向こうには、研究員が立っていた。
 その研究員は、ジェノサイドに何かを渡して、ジェノサイドは小さなそれを飲み込んだ。研究員はボソボソと何かを言い残して、帰って行った。
「何?」
 再び椅子に座ったジェノサイドに訊く。
「薬を貰ったんだよ」
「え?」
 ギガデリックは眉を寄せた。
 ジェノサイドが薬を飲んでいるだなんて、知らなかった。色白で病人っぽく見えるが、話している時に病気のような症状が出たことは一回も無い。
「ジェノ兄、病気?」
「そんな事無いよー」
 けらけらと笑って、ジェノサイドは答えた。
「身体がすごく弱いから、薬飲んでいないと死んじゃうだけだよ~」
「大袈裟だな。死ぬわけねーだろ?」
「あはは。やっぱり、そう思う? でもね、本当なんだ~。特殊な薬を貰う代わりに、パソコン使ってる仕事とは別の実験のお手伝いしてるんだよ。僕、頭良いから、大事にされてるんだ~」
「もしかして、ジェノ兄ってさ、結構エライ研究員?」
「11区のメカ開発のチーフだよ~」
「すげーじゃん!」
「えへへ。スゴイでしょ?」
 ジェノサイドは、他人事のように笑って言った。そして。
「あ、そうだ」
 と、ギガデリックの目玉を両手で抱えて、デスクの上に置く。目玉はギョロリとジェノサイドを見上げた。
「ねぇ、ギガ君。どうやってこれを操ってるの?」
「あー? 何つーか…こっちに来いとか、あっちに行けとか…心ん中で、命令してんだ。この位置に浮かんでろとか」
「動きを全部、指示してるんだね~。そんな気はしてたけど。それってさ、これ一体だったら楽だろうけど、複数になったら大変じゃないかな?」
「まーな。でも、ま、ちょっとキツくても、オレならできる」
「もっと楽になるように、人工知能入れてあげるよ。自己判断で守ったり敵を攻撃してくれるようになれば、ギガ君は大まかな命令と電源さえ供給してればいいんだから」
「よく分かんね」
「だからね、具体的に言うと…。遠くに敵がいたら、ギガ君は目玉ちゃんに敵を倒せって命令するだけで、目玉ちゃんは自分で状況判断して敵を倒してくれるんだ。別の敵が突然現れても、目玉ちゃんはしっかり対応してくれるよ~」
「マジ? 超楽ちんじゃん!」
 ギガデリックは目を輝かせて喜んだ。今まで壱から拾まで自分が考えて機械を操っていた。それが簡単な命令だけで動いてくれるというのだから、喜ばないはずはない。
「ちょっと待っててねー」
 ジェノサイドはデスクの引き出しからディスクを取り出して、パソコンのドライブに入れた。目玉の天辺を指先で触ると、パカッと丸い蓋が開き、そこにパソコンと繋がっているケーブルを差し込む。
「はーい。ギガ君、こっち」
 ギガデリックが座っている椅子を動かして、目玉の目の前に移動させるジェノサイド。
「目玉ちゃんに、顔を覚えてもらってね~」
 そう言い、パソコンのキーボードに指を走らせる。
「っ…!」
 ジクっとした鈍く短い頭痛を感じて、ギガデリックは歯を食いしばった。
「? …ギガ君?」
「気にすんな。コイツの痛みだから」
 ギガデリックは目玉に目線を向けた。機械を操っている時は、その機械が受ける感覚が自分にも返ってくる。ほんの少しの感覚でしかなく、機械が破壊されて自分が怪我をするわけではないが、それなりの痛みは感じてしまう。
「不思議だよね~」
 ギガデリックの事を察したらしく、パソコン画面を向いたままジェノサイドは呟くように言った。
「普通の人間には測れない、凄い能力だよ~」
「だろ? オレは特別だからな! オレの力を認めてくれなかった親に、いつかこの力で復讐してやるんだ」
 ギガデリックは、ニィっと得意気な笑顔を浮かべる。それを見てジェノサイドは哀しそうな笑顔をした。ゴーグル越しでその表情は良くは見えなかったけれど。
「ねーぇ、ギガ君。無数の人間たちの中に、そういう不思議な力を持って生まれてくるのは、神様からの贈り物だと思わないかい?」
「はァ? 神なんかいるわけねーじゃん」
 片眉だけ釣り上げて、目を細める。神なんて想像上の存在でしか無いと、ギガデリックは考えていた。
「神だとかオバケとか、オレは信じねーよ。目に見えねーじゃん」
「リアリストなんだねー」
「ジェノ兄はどーなんだよ? 願いごとでもあんの?」
「んー。気が…楽になれるかもしれないから…。ギガ君は、その力のせいで不運になった事を呪ったことはない? 神様の所為にできるでしょ~?」
「いもしねーヤツの所為にしても、気は晴れねーよ」
「そうだね」
 自嘲にも似た表情でジェノサイドが答えた。キーボードの入力を終え、目玉の天辺に繋がっていたケーブルを引き抜く。
「面白いこと、教えてあげる~」
「あ? 何だよ」
「ギガ君、きっとビックリするよー」
「だから、何?」
「つい昨日、7区の研究員が、神様の波長を見つけたんだって」
「はァッ?」
 いかにも馬鹿馬鹿しそうなことだと言わんばかりに、ギガデリックは大声を出した。第7地区のことは、少しだけ知っている。話に聞いただけだけど、動物を合成したり、変なバケモノを造っているらしい。いかにも怪しいし、信じられない研究だった。
「あとは、その波長を、どう具現化するかが課題だって、報告されてるよ~。もし、成功したら見に行こうよ~」
「超ウソくせー!」
 ギガデリックは舌を出して苦い顔をする。だいたいココの研究員なんて、空想をダラダラと長い語りで本当のように言い聞かせてしまう、限り無く現実に近い空想に溺れた、変なことばっかり考えているヤツらの集まり。
 はぁと溜め息をついて、ギガデリックは目玉を浮かせた。目玉はころりと空中で回転して、大きな目でパチパチと瞬きする。
「軽い…」
 ぽつりとギガデリックが無意識に呟いた。
 負担が、軽くなっていた。いつも機械を操る時には、かなりの集中力を必要とするものだから、グッと力を入れなければならなかったのに。人工知能を入れてもらった目玉は、ちょっとその存在を意識するだけで、思うように動いてくれるようになっていた。
 すっかり機嫌が良くなったギガデリックは、椅子から立ち上がって自分のお気に入りの帽子を投げた。命令しなくても、目玉はヒュンと動いて、放り上がった帽子を自らの丸い身体の上でキャッチした。
「おー、いい感じ!」
 フワフワとギガデリックの前に目玉は下りて来て、手の出しやすい位置で止まり、帽子を差し出すようにピョコピョコと上下に揺れる。
 ギガデリックは帽子を受け取って被り直すと、目玉をぎゅっと抱き締めた。
「何か、生き物みてーだな。ジェノ兄、サンキュー!」
 万遍の笑顔でお礼を言うと、ジェノサイドはドウイタシマシテと言い、にっこりと笑った。
 それから、ギガデリックは目玉と追いかけっこをしたり、目玉の上に乗って浮かんでみたりと、狭い部屋で遊びながら、ジェノサイドの仕事の様子を眺めていた。パソコンに向かってキーボードを打って、手元の紙に何かの図形を描いたりと、その繰り返し。時々、あくびをして、くしゃみをして。
「なぁ?」
 ギガデリックは目玉に乗ったまま、ジェノサイドの横に寄った。
「なーに?」
「ジェノ兄はさ、ココ来る前は、何してたんだ?」
「ん~。この施設に来る前は、別の施設にいて、誰も入らせてもらえない白い無菌室で暮らしていたよ。小さい頃から頭だけは良かったから、点滴しながら大学の教授をしてたんだー。“モニター越しの若教授”なんてアダ名まで付けられちゃってさー。面白いよね~」
 ジェノサイドは、小話のようにけらけらと笑いながら語る。
「ココに来てからは、薬貰ってるから、こうして他の人と同じ部屋に居られるようになったんだよ~」
「ふーん。生まれた時から、そんな弱っちかったのか。じゃあさ、ココに来て、普通の身体になって、良かったじゃん?」
「…そうだね」
 ジェノサイドは薄く笑った。
 その様子に、何か引っ掛かるものを感じたが、乗っている目玉がピクッと反応して、部屋の出入り口の方を向いた。
「マスター、コーヒー持ってきたよ」
 ドアが開いて入って来たのは、ジェノサイドのとは違う形のゴーグルを着け、首周りに派手な羽飾りを纏った髪の長い男。研究員にしては、あきらかに不自然な格好だった。
「おや、君が噂のギガデリック君かな?」
 その男は、こちらを見ると、声をかけてきた。
「誰だ、テメェ」
「ボクはホリック。マスター…ジェノサイドの助手…かな?」
 チラリとジェノサイドの方を見遣るホリック。ジェノサイドはぷっと噴き出した。
「“お手伝い”でしょー?」
「その呼び方、やめて欲しいのだがね。いかにも雑用って感じがしないかい?」
 ホリックは、デスクの上にコーヒーカップの乗ったトレーを置いた。
「え~、実際そうでしょー? ギガ君にもコーヒー淹れてあげて~」
「了解。ギガデリッ君は、砂糖とミルクはいくつ入れるかい?」
「あ!? んだよ、その呼び方、キモッ!」
 今までに呼ばれたことのない、変な呼ばれ方に、ギガデリックは顔を顰めた。しかし、ホリックは気にもせずに笑っている。
「良い呼び方だと思うのだがね」
「お前、キライ」
 ぷいっと顔を逸らせると、ホリックはクスクスと笑った。
「子供は、すぐ、拗ねてしまうのだね」
「テメェ、うぜーよ!」
 ムッとしたギガデリックは、乗っている目玉の天辺をポンと叩いた。その瞬間、目玉の目から、ビームが発射された。
「おや…」
 それを予測していたかのように、ホリックは避けた。結い上げた長い髪が、少しだけビームを掠る。目標に当らなかったビームは、部屋の壁を少しだけ抉って焦がした。
「避けんなッ!」
「危ないな。子供には相応しく無い玩具のようだね」
 ホリックは、やれやれと言ったような様子で肩を竦める。
「ホリック、ホリック!」
 ジェノサイドはあわあわと慌てて、ホリックとギガデリックの間に入った。
「ギガ君、ホリックは悪気があるわけじゃないんだよ~」
「ムカツク…」
 苛立ちを残したまま、身を引いたものの、ホリックを睨みつけてやった。ホリックは相変わらず余裕ぶった笑顔をしている。
「もー、帰る! そろそろ訓練の時間だし」
 ギガデリックは目玉から降りて、目玉を抱えた。
 ドアに近付いたところで、振り返る。
「ホリックとか言ったな、砂糖は4つ、ミルク5つだかんな。覚えとけよ!」
「了解」
 ホリックは変わらぬ表情で答えた。
 部屋を出てドアが閉まる帰り際、ギガデリックは、ジェノサイドがホリックに第2地区へ行くように頼んでいる声を聞いた。
「2区…」
 冷たい色の廊下を歩きながら、ギガデリックは呟いた。
 第2地区は、ここ『TOOL』の管理者がいると噂で聞いたことがある。ソイツは、ここの全てを知っているのだろうか。
 今まで気にもしなかったその存在が、少しだけ気になり始めた。
 
 
 
 
 
つづく


TOOL 3

 ヅー ヅー ヅー ……
 警報音が鳴り始めてもう何時間かが過ぎた。
「煩いなー…」
 細い白銀の髪を掻きむしるように頭を掻いて、溜め息をつく。
 轟音に近い警報音のせいで、パソコンのプログラミングが全く捗らない。
 7区の実験体が脱走したのだろうか。あそこは化け物だらけだから、時々脱走する実験体がいる。監視役のエレクトロは何をしてるんだ。通路を閉鎖して退路を断てばすぐに終わるのに。
 悪態を内心でついて、プログラミングの終わりの意を込めてエンターキーを押す。
 ERROR。
「……」
 …ま、いっか。
 ふうと息を吐いて、伸びをする。ゴーグル越しに蛍光灯を見上げる。
 エレクトロがここまで手こずる脱走者がいるだなんて。きっと警備員は、もっと手こずっているんだろう。何だか可笑しくて笑いそうだった。いっそ、もっと大騒ぎになったら面白いのに。
 そんな思考を廻らせていると、部屋に誰かが入って来る音がした。
 振り返って見れば、硬そうな黒髪を生やした目付きの悪い子供がいた。
 どこの地区から来たんだろうか。迷子なら、研究員が探して拾いに来るはず。
 放っておこうと思い、パソコンのモニタに向き直った。
「おい!」
「えっ」
 いきなり怒鳴られて慌てて振り返ると、少年はすぐ近くまで来ていて、低い身長の目線で見下ろしていた。
「無視してんじゃねーよ」
 思いっきり不機嫌な顔を浮かべている。
「キミ…誰?」
「人にモノ聞くなら、お前の名前言えよ」
 黙って入って来たくせに、少年は大きな態度で言い切った。
「キ…。いや、僕はジェノサイドって呼ばれているけど」
「ふーん」
 興味無さそうに少年は答えて、ジェノサイドをじっと見た。
「オレは、デリック…じゃねーや、ギガデリックだ。ギガ様って呼んでいいぜ」
 一瞬だけ顔を曇らせたが、ギガデリックは勝ち誇ったようにニィと笑った。
「ギガ君、面白い子だねー」
 ジェノサイドは、けらけらと笑う。
「あ、そーだった。ちょっと隠れさせろ」
 何かを思い出したらしく、ギガデリックは強引にジェノサイドの足を退けてデスクの下に入り込んだ。
「バラしたら、ぶっ殺すかんな!」
 足下でそれだけ言い、静かに身を縮めて蹲る。
 それから10分もしない内に、部屋にまた人が入って来た。息を切らして肩を上下させている研究員だった。
「子供を…見ませんでしたか?」
 研究員はジェノサイドに尋ねた。
「ああ、それなら……いっ!」
 突然、足の臑に痛みを感じてジェノサイドが視線を落とすと、小さな手に思いっきり臑を抓られていた。
「い、いいや。見ていないけど~?」
「そうですか。失礼致しました」
 研究員はいそいそと退室して行った。
 その少し後になって。
「テメェ、バラそうとしてんじゃねーよッ!」
 と、隠れていたギガデリックはデスク下から這い出て睨み付けてきた。
「痛いんだけど…」
「当り前じゃん。痛いように抓ったんだからな」
 当然の酬いだと言わんばかりに、ギガデリックはふんと鼻を鳴らした。
「・・・もしかしなくても、この警報が鳴ってるのって、キミが逃走してるから?」
「あ? しらね。さっきからウゼーよな、耳痛ェ」
 ジェノサイドは暫し考え込んだ。もしかして7区のクリーチャーが、こんな遠くの地区まで来たのだろうか。このギガデリックという少年は、いかにも人間らしい姿をしているものだから、てっきり施設の関係者か、その子供なのかとも思っていた。
「ギガ君は、実験体?」
「はぁ? ちげーよ。オレの力が必要なんだって頼まれたからココに来てやったんだよ。でもさ、毎日毎日やる訓練ってのがメンドーになったから、研究員ぶん殴って、部屋出て来た」
「勇敢だね~」
 ギガデリックは生まれつきの異能者らしい。スカウト…と言うのだろうか。自分と似たような状況だなとジェノサイドは思った。
「ちょっと、いいかな?」
 ジェノサイドが立ち上がって、ギガデリックの後ろに回った。
「あー、何?」
 首の後ろを触られて、ギガデリックはくすぐったくて肩を竦めた。
 ギガデリックの後ろ髪を撫であげると、うなじには“11-173-NG”と小さな文字が彫られていた。
 実験体に付けるナンバーだった。
 頼むと言って騙して攫っ来たのだろう。きっと両親は殺されたに違い無い。
 先頭番号が11ということは、11区。つまりここの地区。
「ちょっと、待って」
 ジェノサイドはキーボードに指を走らせて、全てのデータが集約する中枢の監視役であり管理人でもあるエレクトロに繋ぎ、“11-173-NG”のデータを探す。
 まだ数人しか知られていないデータがあった。
 【11-173-NG・ギガデリック:精神感応能力。念力の一種。機械に呼び掛けるようにして念じると、その波動の及ぶ範囲内の機械を操れる。現在、訓練により波動有効範囲の限界を拡大中。能力の詳細については調査中。性格に難があり、洗脳の必要性有り】…と記されている。実験体に他ならない内容だった。
 警報音は、やっぱりこの子の脱走のせいらしい。エレクトロが手こずる理由も解った。封鎖ゲートの機械を操作して無理矢理開けて逃げて来たのだろう。
「ギガ君、ここに来て、どれくらいなの~?」
「さーな、一ヶ月くらいじゃん? あ、今何時?」
 ぱっと表情を変えて、ギガデリックはきょろきょろと時計を探した。しかし、殺風景でパソコンくらいしか無い部屋で、時計は見当たらなかった。
「19時過ぎたよ」
「そ。じゃ、オレ帰る。訓練の時間終わりだし」
 ジェノサイドに言われ、ギガデリックはほんの少しだけ安堵したように笑って、部屋の出入り口に向かった。
 ふと足を止めて振り返る。
「オレ、お前気に入ったから、また来るぜ。他の研究員みたいにエラソーなこと言わねーし、命令しねーし」
「あはは。まぁ、僕は、他の研究員とは違うかもしれないねー」
 ジェノサイドは他人事のように笑って、ひらひらと手を振った。
「今度来たら、顔見せろよ」
「あー、ダ~メ。これ無いと何も見えないんだ。目弱いんだよー」
 ギガデリックの黄色いゴーグルの事を言われて、ジェノサイドは苦笑した。
「ギガ君、悪いこと言わないけど、研究員の言う事は聞いた方がいいよ?」
「はっ! 冗談じゃねーっつーの!」
 ギガデリックは舌を出して睨むと、部屋を出て行った。その後、しばらくしてから警報音は止まった。
 ジェノサイドはくすっと笑って、プログラミングをやり直し始めた。
 
 
 
 
 
つづく


TOOL 2

 黄色味を帯びた肌に、赤茶色の髪を生やした少年。
 名前はグラビティ。名前と言っても、親からもらった名前では無い。ただ、そう呼ばれるようになっているから、それが自分の名前になっていた。
 グラビティは狭いケージの中、ごろりと寝転んでぼんやりとしていた。
 あの時に見たものが、今でも目の前に見えてるように覚えてる。
 暗い部屋に座っていたヤツ。
 名前はエレクトロだったか。体中にケーブルやコードが繋がっているのが、印象的だった。
 いきなり部屋中が銃だらけになったのは、正直恐かった。まぁ、勝手に部屋に入ったのは悪いのかもしれないけど、こっちだって都合があったんだ。
 撃たれなくて良かったと思うのがいいかもしれない。あれは、眠らされるヤツじゃなかった。きっと血がいっぱい出るヤツだ。
 アイツが、あの全部の銃を操っていたのは何となく分かる。きっとそれがアイツの“力”だ。
 全く分からないヤツだけど、きっと自分とどこか同じだと思う。
 そう感じた。
 少なくとも、この部屋の連中よりは。
 
 自分が生まれたのが、いつなのかなんて知らない。
 ただ、分かるのは、自分はここに居てはいけないという焦燥感があるということと、他人とは違う“力”があること。
 そして、時々遠く古い記憶の奥底にある、何者かの声が響く。顔も知らない、どんな声でどんなことを言われたのかも覚えていない。知らない覚えていない誰かが、自分の中にいる。
 それらから自分が弾き出した答えはひとつ。
 
 生まれ育ったここを捨てて、知らない外の世界へ。
 帰る所も無い、行き先の無い脱出を。
 
 
 
「ギィギィ!!」
 金切り声を上げて、向い側のケージに入っていた硬そうなウロコを身体に纏った大きなイモ虫みたいなヤツが、研究員たちに連れて行かれた。
 その様子をグラビティを始め、部屋内の実験体が見ていた。金切り声に反応してギャアギャア騒ぎ始めるヤツもいた。狂ったように自分の身体を掻きむしって喰らい付くヤツもいた。
 ここにいる連中は、いつ自分がそうなるか恐怖に縛られていた。研究員に連れて行かれれば、自分が自分でなくなって戻ってくる。少しづつ自分の身体に異物を投入されて、自分のものではない身体の一部が増えて行く。時には二度と戻って来ないヤツもいた。
 研究員が実験体を連れて行った今がチャンス。暫くは実験に夢中になって、研究員はこの部屋に戻って来ない。
 グラビティは身体を起して、鉄格子を握った。
 脱走を察したのか、右隣りのケージにいるワニの頭をした6本足の獣が目を開ける。
「…ソト…イク…ヤメ。シヌ…サレル」
 ガラガラした聞き取りにくい声で、その獣が言ってきた。
「悪いな、そういうワケにはいかねぇんだよ」
「ソト…ナイ…。ココ…スベテ」
「無いんじゃねぇよ。知らねぇだけだ」
 グラビティは握った鉄格子を睨み付けた。バキンと音がして、握っていた鉄格子が小さく潰れて外れた。同じことをやって身体が出られるくらいにまで鉄格子を数本外すと、グラビティはケージを出て、慣れた動作で積み重なったケージを飛び下りる。10メートル以上もの高さから、ふわりと音も無く床に足を付いた。
 それを見ていた何体かの異形の生物たちが、訴えるように声を出してきたが、グラビティは聞こえないふりをして部屋を出た。
 
 人の気配のない廊下は、灰色しかない通路。冷たい光をぼんやりと放つ蛍光灯が天井に並んでいる。
 グラビティは慎重に一歩を踏み出して、感覚を研ぎ澄ました。
 獣と同じ聴覚も、嗅覚も、視覚も、所詮は人間の娯楽による付加物でしかないけれど、それが嫌でも役に立つ。
 冷たい床をひたひたと裸足で進む。どっちの方向が出口だなんて分からないけれど、進むしか無い。
 ジジっと微かな音がした。人間ならば絶対に聞き取れない小さな音。その音の方向にを見上げると、壁の上、天井近くに円いガラスがあった。
 監視カメラ。そう思った時には手後れだった。
 辺りはたちまち警報音に包まれる。
 何でこんなに監視カメラの反応が速くなっているのだろう。以前は監視カメラなんてあって無いようなモノでしかなかったのに。所詮、人間が遠くの部屋で見ているだけだから、見落とすことが殆どであったのに。
「くそ!」
 グラビティは叫んで走り出した。できる限りここから離れなければ。
 全速力で廊下を駆け、突き当りを曲がろうとしたが、分厚い鋼鉄のゲートに塞がれていた。慌てて反対方向に身体を返したが、その方向は、今まさにゲートが閉まる所であった。
 ゴオンと音がしてゲートが閉まると、先にも後にも進めない廊下に閉じ込められた。
「な…んで?」
 おかしい。こんなはずじゃなかった。どうしてこんなにも正確に位置を把握出来るのか。まるでこの巨大な建物自身が生きていて、見張られているようだった。
 グラビティはぐぅっと力を入れて鋼鉄の壁を睨み付けた。
「潰れろ!!」
 ドン!!
 耳を壊しそうな音が響き、鋼鉄の壁が見えない鉄球にぶつかったかのように丸く窪んだ。勢いに乗って第二波の力を込め、再び放とうとした時、信じられない事が起きた。
 鋼鉄の壁が見る見る内に元の形に戻っていく。得体のしれない奇妙な事態を、グラビティは呆然となって見ていた。
「どうなってんだ…」
 恐る恐るゲートに近付き、そっと手を触れる。普通の冷たい鉄だった。ただ、以前とはひとつだけ違うことがあった。人間ならば感じない、微弱な電気が流れている。この電気が鋼鉄の壁を直したとも思えないが、これでは今までのようにゲートを破壊して突破することができない。
 グラビティは、この僅かに感じる電流を知っていた。
 あの時の、あの部屋。壁や天井が一瞬にして重火器に変化したその時に、足の裏に感じたものと酷似していた。
「エレクトロ…?」
 予想の中の人物の名前を呟く。
 ゴゥンと音がして、後ろ側のゲートが開いた。僅かに開いた先には、警備員が隊列を組んで銃を構えている。
 はっとして力を込めようとした時、首筋にチクリと痛みがした。
「く…」
 首筋に刺さった麻酔針を抜こうと手をかけたところで、意識が遠退いた。
 
 
 
 ズキズキとする頭の痛みに、グラビティは顔をしかめながら、ゆっくりと目を開けた。麻酔の抜け切らない身体は、酷く重い。見慣れたケージの小さく低い天井が、焦点の合わない目に入った。
 ふわふわとした意識の中で、鋼鉄のゲートが元に直っていく様を思い出す。
「卑怯じゃねぇかよ…」
 グラビティは、ろれつの回りきれてない声で心の内を外に吐き出した。
 監視カメラの反応の速さ、鋼鉄のゲートの修復。…アイツの“力”なのだろうか。真紅の髪をしたあの子供。無表情で、生きた感じのしない生き物。
 アイツさえいなければ。そう思った。思ったけれど。そうじゃない。違うんだと自分に言い聞かせた。忌むべきは、人間。アイツは、人間に捕われ操られているはずだ。
 だから、自分はもう一度、アイツに会わなければならない。ココから逃げるためにも、アイツのためにも。
 しかし、もう一度会いに行くにも、このままの状態では歯が立たない。いくら何を考えても、エレクトロに会いに行く手立てが思い付かなかった。
 ふと気が付けば、右の二の腕に小指の爪くらいの小さな傷があった。身に覚えのない傷に、グラビティは目を細める。
 明らかに人為的な、肉を抉る傷。細胞をサンプルとして採取した後の傷跡だった。
 
 
 
 
 
つづく


ポップン絵まとめ5

ポップンミュージック ポット2004/12/16
落書きポエット


ポップンミュージック ロキ2004/04/05~2004/04/20ランダムトップ絵
ロキの性別が分からなかったのです。


ポップンミュージック ツララ デイヴ2004/03/31~2004/04/20ランダムトップ絵
この2人って、こういう関係だと思っていました。


2004/03/30
ジャックって低血圧で朝に弱そうなイメージ。


2004/01/02
新年のトップ絵。ユンタって冬が似合わないね。


ポップンミュージック ツララ2003/12ごろ
ツララの曲も大好き。


下に行くほど更新が古い。
一部、正確な更新日がいつだったのか分からない古い絵。
 
 
ポップンミュージック かごめ



ポップンの同人誌をもう1つ出したくて描いていたアナログ原稿の一部。結局、出せなかった。
ちなみに、うずしおは、ユンタとかごめの純愛が好き。太陽と月みたいでいいと思うのです。


弐寺絵まとめ5

下に行くほど古い。
 
 


2004/12/13
ポップンな『traces』。移植されて欲しい。と、何度願っていることか。
ポップンだからTRANCEでは無くて、何か妙なジャンルに開拓されそうな感じがするケドね(笑)
BAD取ったら翼で顔隠して、フィーバーアクションで女神に変身して~!(興奮)
…無理だと知っているけどさ。
『A』も然り。いいじゃん、ルネッサンス。道化様の御降臨で、ポップン界に新風を撒き散らして下さいよ。
具合として、ポップン13で『No.13』が来たら、狙い過ぎ(笑)


2004/11/16
『GENOCIDE』のジェノ兄さん。
意外に髪型が難しいんですけど、この人…。
私はカッコイイ人だと思っているんですが、皆様はどうなんでしょうか。
…ちょっとアホでお茶目だと私的にもっとツボです(笑)


2004/10/11
世紀末の破壊神と軌跡の神。
破壊神なのに、和み系。
尊敬しているtracesと、何でも同じにしたいお年頃。


2004/09/24
真っ白な天使の翼を黒く染めてみたいという心理。
エレクトロは良い子です。良い子すぎです。だからこそ、悪い方に走ったら、此の上なく悪くなると思います。イメージ的には、『PEACEMAMER~鐵~』の北村鈴くんのような雰囲気。
堕天使も、きっとそういうもの。 世界を壊してはいけません。
良い事を知っている人は、何が悪い事であるのかも知っている。…そういうワケさ。
…法律というのは、正義ではないのです。人間が人間の都合で決めたルールなんです。だから、人間にしか適応しないんです。
描いておいて言うのも難ですが、うずしおは素直で良い子なエレクの方が大好きです。


2004/08/29
殺気万遍のアーミィたん(笑)
多分、今まで描いてきた中で、一番公式に近い雰囲気だと思われる。
平気で人を殺せる子供なのですよ。
…でもそれは育ってきた環境のせいだと思いたい。
本当は素直で良い子だと思いたい。
サバイバルナイフ一本で辺境の地を生き、ハンドガン一丁で激戦地を勝ち抜ける、逞しい子だと思います(逞しすぎ)


エレクトロは、本気出せば強いっていう妄想。
どんな生き物よりも強健な再生能力とどんな兵器よりも強烈な破壊能力、どんなPCよりも強力な演算能力…。
だけど、性格が温厚で天然だから、それらの力の本領は殆ど出てません(笑)
それでこそ、我が家のエレク。


2004/07/31
A属性幸運種。
友人と盛り上がった、ドラゴンクロニクルにA様が進出の話。
ガードとシールドが同時に出せるとか、全ての能力値は999だとか、どんな技も先制行動だとか、全属性を兼ねているから弱点が無いだとか、もうホントにメチャクチャな設定です。他にも、見ている敵ドラゴンとは違う敵ドラゴンに攻撃する、プレイヤーを無視した行動もするというのもありました。う~ん、A様っぽい!(勝手な解釈)
その時に「Aの幸運種ってどうよ」と友人が言い、うずしおは本気で欲しくなりました(笑)
きっと、問答無用で可愛いですよ。あのアクアラ玉(?)に乗って、広大なる空で大暴れして欲しいです。
HP560・MP380・打撃310・魔法310・耐力100・運310…くらいが最強として妥当な数値だと思います。他の数値が高い分、耐力が低くてダメージが大きい。上限値解除は全数値(耐力含む)+30のアイテムが売っているとか。
称号には、“至高の道化”とか付いて欲しいです。
…こういうネタは両方のゲームを知っていないと、見る側には微妙ですね(苦笑)
一応はデラの項目に置いておきます。


2004/07/12
幼少時代のグラビティ。妄想全開でご提供。
ケージの中で生活してた時期があったと妄想してる。


2004/05/29
滝Holic。デスクトップの背景や、ホームページの背景に使えるよ!


2004/05/23
横向きtraces。
最近、良くtracesを描くので、 その横向き姿なんぞを想像してみる。やはり、頭の兜が良く解らない…(汗)
鳥足で描いているのは、私の個人的な好みです(笑)


あくる日、エレクトロは街に本を買いに行きました。
本屋さんですっかり時間を費やしてしまい、お店の外に出た時には、もう真っ暗でした。
急ぎ足で帰る途中、バス停の近くのポリバケツに、何やら得体の知れないものが入っていました。
それは大きな黒い翼を生やした人でした。けれど、この世界に黒い翼を生やした人間がいるなんて聞いた事がありません。
エレクトロはその生き物を、自分よりも大きなカラスだと認識しました。
「何…してるの?」
エレクトロは恐る恐る声をかけてみました。
すると大きなカラスは目を開けてエレクトロを見上げました。
「今宵、初めて地上に降りた。しかし、見慣れぬ土地ゆえに、場所の把握が覚束ぬ…」
「迷子…なんだ?」
「地上のニンゲンに言わせれば、そういう事になるやもしれぬ」
「そっか。…でも、迷子なのは解ったけど、どうしてポリバケツに入っているんだい?」
大きなカラスは、明らかに窮屈そうにポリバケツに入っています。大きな翼は入りきらずに外にはみ出ていました。
「先程、ここには矮小なる生物がいた。それはニンゲンに『ししゃも』と呼ばれ、連れて行かれた」
「ふぅん」
「我もここにおれば気の知れた者に会えると思ってな」
大きなカラスは、全く困っている様子でもなく悲劇を語ります。
「そこへ、貴様が声をかけてきた」
「え…。うん。君、すごく目立つから…」
エレクトロは苦笑いを浮かべました。
何だか良く解らないものには、あまり関わりたく無いけれど、放置しておくのも可哀想です。
首輪が無いので、野良の鳥だと判断したエレクトロは、大きなカラスを家で飼う事にしました。
グラビティもアーミィも反対はしなかったけれど、賛成の言葉も言ってくれませんでした。
 
二日後、道化師のような格好をした人がやって来ました。
その人はどうやら大きなカラスの飼い主のようです。
「よかったね、飼い主さんが来てくれて」
「飼い主? 飼い主という意味は知らぬ。だが、これで神界に帰れる。世話になったなヒトの子よ」
大きなカラスはエレクトロにお礼を言うと、魔法陣を描いて空間に穴を開け、道化師に似た人と一緒に帰って行きました。
「ちょっと恐そうなカラスさんだったけど、いい子だったね」
エレクトロは少し残念そうな顔をして、グラビティとアーミィに言いました。
けれど、二人とも、引きつった顔をしただけでした。
 
 
 
終わる


創作絵まとめ4

下に行くほど更新が古い。
一部は正確な更新日がいつだったのか分からない古い絵。
 
 

2004/12/10
名前:デビルゴート
展示物のトップ絵になっていたヤギ。
超久々に獣人。半獣人でなく獣人。山羊。
紳士的で悪魔的。生け贄のようであり、魔王の象徴でもある。
昔から、山羊にはそんなイメージが付きまとっていた。
…私が“ヤギ”と言えばbeatmaniaIIDXの『A』の道化師様か、ドラゴンクロニクルの闇属性亜種(濃)を指しているけどね!(笑)
でも、私にとってのヤギの古いイメージは、こんな感じ。




名前:イスカロス(2004/11/07) メリト(2004/11/12)
白いのがイスカロス、角が生えてるのがメリト。
 
【イスカロス】
漆黒を白銀に、赤を蒼に、黄金を純銀に。
それは世界の秩序。
唯一にして全て。
 
【メリト】
新緑を真紅に、白を黒に、ルビーをエメラルドに…。
それは世界の変革。対をなすように必然的に存在する、イスカロスの対極にして片割れ。双璧をなす存在。
 
一歩前に出る為の勇気。その代償に選ばれた者。選ばれた者を守りたい心。色々と複雑さの混じった想いが籠ってます。
私にとって、大切にしなければならない存在。その為に…。
スケープゴートが…身代わりにする生け贄の羊が必要だったんです!(笑)
だから、せめて日の目を見させてあげる事で罪滅ぼし。
お前をかいた事で、私の心は救われたんだ!(笑)


2004/10/25
題名:白黒うさぎ


2004/02/14~2004/03/31のトップ絵
名前:バグ
ちょいと長くトップに居てくれたオリジナルのバグ君。お気に入りでした。


2004/01/29
名前:未熟児
大好きなあの子は未熟児だったんです。だから、大きくなると死んでしまうんです。
鏡に映るあの人が、そう言っていました。
…というお話。
大きくなると忘れてしまう事。過去になれば悲しい事。思い出すには悲しくて、忘れてしまうには愛おしい。生きるのが辛くても、死ぬのは口惜しいのだと。複雑な矛盾。
・・・電波受信完了(笑)


名前:バクライエン
この絵は1995年ごろに描いていたものです。本能のままに描き続けたものの、未完成のまま止まっています。
これこそが、最愛の創作キャラクターのサージェイドの原型になる存在。
一番下にいる水玉模様の生き物が本体です。一体ずつ名前も付いていましたが、もう忘れてしましました(苦笑)
原画の縦の長さは約2メートル64センチ。ペンと色鉛筆を使用。
これは2作目で、完成した1作目(約1メートル80センチ)があったのですが、データに残せず、この世から消えました。


創作絵まとめ3

ざかざかと描いたラフ楽描きたち。
5枚目はグロ絵なのでご注意。
 
 




この下はグロ絵なのでご注意。