命
白い壁。点滴の雫。金色の西日。
静かに穏やかに時間は過ぎる。
命は強いと言う人がいる。
命は儚いと言う人がいる。
結局、どちらでもない。言いたいように言えばいい。
命が強いか儚いかなんて、どうでもよくなった。
筋の浮き上がった首
肉の厚みの無い指
弱々しい笑顔
病室で会ったあの人は、記憶の中の姿と全く別の姿だった。
あんなに痩せていただろうか。
あんなに力の無い声だっただろうか。
ひと桁の確率の命
ひと桁の年月の命
「もう、悔いはない」
その一言が、どんなに重かったことか。
終わろうとする身体の中には
家族や親戚への優しい思いやりでいっぱいだった
・・・泣かないように…なんて、無理だった。