与太話
今日は眠すぎてダメなので、早寝するのだぜ。
とある平行宇宙の与太話を…。(早寝するんじゃないのかよ!)
昔々、寡黙な暗黒の宇宙と、それと双生となる純白の神がいました。暗黒の宇宙は純白の神から意思をもらい様々な物質を生成し、純白の神は暗黒の宇宙から特別な力をもらっていました。
純白の神は他の神々と違い体に形がありませんでしたが、他の神々よりも強い魔力を持ち、暗黒の宇宙と同調してあらゆる事象や法則を支配することができました。そして、その力で人間の願いを叶えることに喜びを感じていました。
人間たちはどんな願いも叶えてくれる純白の神を心から崇めるようになりましたが、人間の信仰心を多く受けている純白の神を、他の神々は良くは思わず、嫉妬するようになってしまいました。
時が過ぎ、人間は星の中で一番の繁栄種にまで上り詰めます。けれど、いつしか悪い願い事をする人間が現れるようになりました。純白の神は人間が悪い願いをするとは知らずに、悪い願い事も叶えていました。
悪い願いが叶うと戦争が起き、世界は廃れ、星は弱っていきました。そして、時には人間や他の生命が滅んでしまうことさえありました。それを、何度も繰り返していたのです。
他の神々は純白の神を悪神と決め付け、力を合わせて純白の神から神格を剥奪しました。
神格を剥奪された純白の神は星へと堕ちていき、行方不明になってしまいます。
それを知った暗黒の宇宙は激怒し、他の神々を人間には見えなくなるようにしてしまいました。そして、星の生き物たちが神々に会いに来ないよう、星から出られないようにしました。
神々は人間から見えなくなってしまったために信仰心が激減し、力を弱らせていきました。
人間たちは、記憶に残っている神の姿を忘れないように、あらゆる方法でその姿を描き写し、後世に残しました。けれど、体に形の無い純白の神だけは、その姿が分からなかったため描くことができなかったのです。
完全に人間たちから忘れられてしまった純白の神は、暗黒の宇宙との同調ができなくなり事象や法則を支配する力を失い、暗黒の宇宙は純白の神からの意思を受けられなくなってしまったため、ただただ肥大化するだけの空間に成り果ててしまいました。
星に堕ちた純白の神は、その姿をさまざまな生き物に変えて、人間たちを観察するようになりました。どうして人間が悪い願いをするようになってしまったのか、その理由をどうしても知りたかったのです。
人間たちを観察していると、いつからか人間たちは白い生き物を神の使いだと勘違いするようになりました。太古の昔、願いを叶えていてくれた純白の神の存在を魂が覚えていて、受け継がれていたのでした。
純白の神は自分が堕ちた悪神であることを人間に知られてしまうのではないかと懸念し、自分の姿を恐ろしいドラゴンの姿に変えて深い森の中へ身を隠すようになりました。
それでも、稀に人間に出会うことがありました。恐れ泣き叫びながら逃げる者を静かに見送り、周りに力を誇示するために勇敢に戦いを挑んでくる者は去るまで耐え、飢餓に苦しむ時代にも関わらず僅かな食料と少女を生贄に捧げてくる者を追い返しました。
なんて不思議な生き物なんだろう。純白の神は思いました。強い個を持ちながら、集団で力を結束することもできる。複雑な思考のせいで、良いことも悪いことも、その境界線を見出すのがとても困難となる。
純白の神は、人間への興味を強め、人間の心理を知りたくなりました。そこで、自らも人間の姿になって人間たちを間近で観察しようと思い立ちました。人間と同じ姿にして同じことをすれば、自分が神であると気付かれないだろうと思ったのです。
しかし。
永い永い間、ドラゴンの姿をしていた純白の神は、その姿を完全に人間に似せることはできませんでした。