日常記録やゲームの感想とか、創作や二次創作の絵や妄想を好き勝手に綴っていく、独り言の日記。
 


しばらく日記更新お休み


 

うちよそ話

日常の雑記 - 日記

うちよそ、楽しいな。ハマってる。
あやさんの世界観が魅力的過ぎる。喫茶店のお名前も「再会」の意味だなんてステキすぎて…。
 
ではでは、今日は、お話2本です。
毎度ながら、勝手にあやさん宅の世界観をお借りしたお話。
 
1話目は、うちのサージェイドの小難しいアホ話と小ネタ。短文です。
2番目は、あやさん宅の赤い魔女・ヒメカちゃんのお話です。
恋を知らない王女と、恋する魔女。この対極さが、とてもいい設定だと思います。うずしおの好み!!
うずしおは、一途で儚い恋に弱い。
殆どうずしおの妄想なので、あやさん宅のヒメカちゃんとは相違があります、申し訳ない。
お話短めにするために、ちょっと文章構成が荒いです。短めでも美しい文章構成と表現ができるようになりたい…。
 
みなさま、良いお年を。


「テンチョー、てんちょお!」
 サージェイドは店内の客がいなくなると、店長の傍へ駆け寄った。
「何だい?」
 後片付けをしている店長が、手を止めて顔を向ける。
 サラの魂の奥深くで眠っている、願ってやまない【恋】とはどういうものなのか教えてもらいたかった。宇宙は全能だけど、全知ではない。
「あの、アレ…何ダ…?」
 言おうとして、言葉に詰まった。
「?」
 店長がきょとんとした顔で首を傾げる。
 ああ、だめだ。【恋】って人語で何と言えばいいんだ。言語が分からない。どうして人間は、こんなに言語が複雑なのか。
 店長の思考に直接言葉の意味を伝えられればいいが、それが普通にできたのは前の話。すっかり神通力が衰退してしまった今では、そんなことも簡単にできない。
 銀河のひとつでも吸収すれば、しばらくは活動に困らない力に変えられるが、銀河を吸収するには数十年かかる。この星の人間の寿命からすれば長い年月だ。何より、サラの命に間に合わない。
「あ、うー。いつモ、サラが…思う、やつ!」
「サラちゃんが思ってることかい?」
 店長は腕を組んで思考をめぐらせた。
「友達のこと、宿題…、映画、テレビのドラマ、明日の朝ごはん…とか?」
「ごはん…!」
 サージェイドは無意識に尻尾を振った。
 違う。今はそれじゃない。
 知らない言葉もあって気になるけど、知りたいのはそれじゃなくて。
「今日の日替わりランチは、サージェイドくんが好きな、チーズハンバーグだぞ~」
 こちらの気も知らず、店長はにやりと笑って魅力的な言葉を投げてきた。
「ちぃず!」
 だから、違………食べたい。
「ふっふっふ…。しかも今日はチキンステーキも付けちゃうからね」
「ホントか!」
 …あれ? 何考えてたんだっけ…?
「もうすぐできるからね」
 おいしいごはん。
 願われれば、望みを叶える。自分はそういう存在。願いを要求することはできないが、店長はいつもサラを守って欲しいと言っている。だからきっと、ごはんはサラを守る対価に違いない。
 サラを守るための力の温存は重要だ。
 
 サージェイドは店を出て、飛び立ち、店長の喫茶店の屋根の上に身を横たえた。煌々と輝く太陽を見上げる。
 あんな近くにとても小さな恒星がひとつある。食指を伸ばせば、すぐにでも届く距離に。でも、あれを吸収してしまったら、この星の生態系が大きく変わってしまう。人間の生活も大きく変わるから、サラが困るかもしれない。それでは本末転倒というもの。
 骨格だけの翼に皮膜を広げて、日向ぼっこをする。恒星から放たれるエネルギーを我が身の全てで吸収して時間を過ごした。光も吸収するとなると、他の生き物からは観測不能な真っ黒な物体に見えているかもしれないが、そんな事を気にしている場合ではない。
 半身である暗黒の宇宙はずっと眠ったままエネルギーを消費できずに膨れ上がっていく一方。そのエネルギーを得て物質と神通力に変換し、肥大化を抑えていたのは自分なのに。
 近頃、もし力が尽きたら自分はどうなってしまうのかと考えるようになった。この思考すらも無くなるとしたら、自分は何になるのか。生命体でもなく、霊体ですらない。存在を証明できるものがいない。
 ここまで自我を意識させられてしまうのは、人に近づき過ぎたせいか。
 人間は、獲物を狩る牙も無い、天空を駆る翼も無い、光が無ければ視界も閉ざされる。けれど、これらを全て克服した種族。己に無いものを得ようとするその貪欲さは他の種族には無い。そして、己を強く自覚し他を意識する、そんな面白い存在。
 人間への興味は尽きない。原初に戻すことも躊躇うくらいに。
 今はサラの願いを叶えるために、サラを守るために、この星のここに留まっている。願いの天秤は傾いたまま。サラが願えばいつでも叶えられるのに、サラは願いを思い出せないでいる。
 ふわりと優しい気配を感じて、サージェイドは身を起こした。
 サラが「学校」からここへ向かってくる。
 ああ、そうだ。【恋】ってなんだろう。
 
 
 
【サージェイドに関する小ネタ:割と与太話】
過去に、サージェイドが暗黒の宇宙と分断される前、対価無しで無尽蔵に願いを叶えていたときのこと。
不老不死を願った男がいた。願いが叶った男は、永い永い時間を思うまま自由に生きた。しかし寿命が尽きた星は崩壊し、宇宙へ放り出された。生物のいない惑星に辿り着いた男はその惑星の寿命が尽きて崩壊するまでを孤独に過ごし、燃え盛る恒星の重力に引き寄せられた男はその恒星の寿命が尽きるまで体を焼かれ続けた。それを延々と繰り返し、今でも宇宙のどこかを彷徨っているらしい。
また、サージェイドと同等の力が欲しいと願った女は、別次元の空間を与えられ、無の空間から宇宙創成をするハメになった。さらに自分が望む願いを叶える事が出来ないのを知り、絶望した。願いを叶える仕組みは自分自身の願いには発動しないからだった。永遠に続く時間の最中、気まぐれに別次元に来たサージェイドと奇跡的に再会することができ、女は殺してくれと願った。サージェイドはその願いを叶え、別次元の空間も消滅した。
同じ願いが重複したり、法則の組み合わせが物理的に不可能な場合、過去に戻って未来を変えたいなど、ひとつの次元で願望成就が不可能な場合は、別次元(パラレルワールド)を生成してそこで法則を組み直す。
絶対条件として、願いを叶えてもらうにはサージェイドと対峙し本人が直接伝えなければいけない。離れた所で、祈り、思うだけでは叶わない。解釈違いな願いが叶ったりする場合もあるので、伝える際は慎重に。
一緒にいたい、傍に居て、宇宙の全てを手に入れたい、というような願いは、サージェイドに吸収されるだけなので、願わないほうがいい。常識が通じないことも多々ある。
 
暗黒の宇宙は宇宙の外側であり、サージェイドの半身にして原動力。存在しているのかも不明の空間だが、サージェイドだけはその存在を認識しエネルギーを得ていた。
半身である暗黒の宇宙と分断されてからは、願いを叶えるには対価が必要になった。暗黒の宇宙と分断された原因は、神々の嫉妬。
不老不死、銀河支配など、多くの事象に影響する願いには大きな対価が必要になる。特に、時間に影響する願いは対価が大きい。
 
願いとは関係なく、サージェイドは宇宙の物質を吸収する(ブラックホールとして観測されている)。この行動はサージェイド自身の意思なので、この時だけはどんな願いも聞き入れない。
暗黒の宇宙と分断されたせいで不足するエネルギーを補うためであり、宇宙に散らばる全てを吸収すれば暗黒の宇宙に再び会えると思っての行動なので、他の生命がどうなろうと知ったことではない。


 どうしてあの神が。
 雪のように真っ白な肌に深い晴天色の青い髪、人間の姿に似せていても、すぐにわかった。あれは超高密度の魔力に似た力が具現化した「何か」。
 神としか言い表せないからそう呼ばれているだけであって、正体不明の願望機関だと魔女の間では言い伝えられている。天の星々を喰らう化け物であり、どんな願いであっても法則や理を組み替えて叶える存在だと。
 お伽噺のような、ただの言い伝えだったはずなのに、まさか実在していたなんて。
「なんであんなのまで味方に引き入れてるのよ! そこまでして全部ひとり占めしようっていうの!?」
 ヒメカは感情が昂ぶって、手にしていた水晶玉を床に投げつけた。
 叩き付けられた水晶玉は硬い音を響かせ、ころころと部屋の隅に転がる。壁に当たり、水晶玉が止まった。
「あ…」
 水晶玉の表面にある小さな古傷。それが目に入ってヒメカは我に返った。
 
 
 魔女だって、恋をする。
 
「ヒメカは魔法が上手ね」
 いつも褒めてもらっていた。
 暗く深い森にある小さな魔女の村で、ヒメカは生まれた。
 村の中でもヒメカの魔力はとても優れていて、村の魔女たちは幼いヒメカを褒め称えていた。
 ある日、ヒメカは魔女の一族の宝とされている水晶玉を受け継いだ。
 幼く小さな両手には余る大きさの、世界を逆さまにして閉じ込めたような曇り一点無い美しい水晶玉。魔女たちに使い方を教えてもらったヒメカは、すぐに使いこなせるようになった。
「わぁ、きれい!」
 水晶玉の中で初めて見る外の世界。大きな大きな水溜り、地平線まで広がる草の絨毯。白い帽子を被った大きな山。
 村のすぐ外にある鬱蒼とした暗い森とは全く違う景色に、ヒメカはすっかり夢中になった。
 多くの魔法を学び、水晶玉で世界を見る。小さな村で、そんな日々が過ぎた。
 いつも通り勉強を終えて、木の机の上に水晶玉を置く。今日は何を見ようかなと心を弾ませる。
 水晶玉に映し出されたのは。
「これは…人間?」
 初めて見る、人間。
 いつも森から遠く離れた場所を水晶玉で見ていたヒメカは、森の外に人間の国があったことを知らなかった。
 人々が笑顔で行き交う大通り、色々な果物が並べられたお店。小さくて古臭い魔女の村にはない活気に溢れていた。
 幼い魔女は珍しさに興奮し、水晶玉で国中を見て周った。
 そして、国の外れであるものを見て、ヒメカは目を大きくした。
 国の外れは寂れた町だった。崩れそうな壁の家の前で、同い年くらいの幼い男の子が2人、パンを齧っていた。埃で黒く汚れた頬いっぱいにパンをほおばり、万遍の笑顔でお話しをしている。その幼い男の子の片方、右目が固く閉じられている隻眼の少年の笑顔に、目を奪われていた。
 高鳴る心音、揺れる瞳、ぽかぽかと顔が熱くなる。生まれて初めての感情に、ヒメカは戸惑った。魔女たちに、人間は怖い人たちだと教わっていたが、そんな記憶も片隅に追いやられ消えていく。
 ヒメカはきらきらとした表情で、隻眼の少年を見るようになった。
 どんな声だろうか、どんなお話をするだろうか、何が好きだろうか。
 日に日に想いは強く重くなる。心が押しつぶされてしまいそうだった。
 ある時、隻眼の少年が近くの森へ木の実を採りに来ると知ったヒメカはいてもたってもいられず、大急ぎで水晶玉を抱え、魔女たちに内緒で魔女の村を出た。
 薄暗い森を走り、水晶玉が映し出す少年のもとへ。胸が苦しくなるほど息を切らし、痺れる足を我慢して走り続けた。
 そしてついに、水晶玉の中の虚像ではない、本物の隻眼の少年を見つけた。体の疲れも、まるで無かったように消えた気がした。
 身を屈め木の実を拾っている少年に、一歩一歩ゆっくりと近づく。
「!」
 ヒメカはびくりと体を飛び上がらせた。大きな狼が牙をむき、草むらの陰から少年の背中を狙っていた。
「だめぇ!」
 精一杯の悲鳴をあげる。少年は驚いて立ち上がった。
 狼は大きく唸り、狙いを少年からヒメカへと変え、飛び掛ってきた。
「あぶない!」
「きゃっ!」
 隻眼の少年はヒメカを突き飛ばし、狼の牙から守った。
 狼はグルルルと声を荒げ、隻眼の少年に狙いを定める。少年は足元にあった石を拾い、狼の顔めがけて投げつけた。それでも怯まない狼。
 少年は近くの木の枝を折り、それを構えた。
 睨み合う少年と狼。
 狼は少年の気迫に負けて、後退し、森の奥へと消えていった。
「だいじょうぶ?」
「あ、あり…ありが…と…」
 隻眼の少年に声をかけられ、ヒメカはたどたどしくお礼を言う。少年がヒメカの手を取り、ゆっくりと立ち上がらせてくれる。
 その手の温かさ、真剣な眼差しの後に見せてくれた安堵と優しさの笑顔に、ヒメカは恍惚とした。
「ごめんね。きれいな石が、ケガしちゃった…」
 少年に助けてもらった弾みで飛んでいった水晶玉は、尖った岩にぶつかってしまったせいで、小さな傷がついていた。隻眼の少年は水晶玉を拾い上げ、土を払い落としてヒメカに差し出す。
「ううん。いいの」
 ヒメカは首を振った。
 あなたが無事なら。
 水晶玉は一族の宝物だけれど、それよりも大切なものが目の前にいる。
「あ、あの…」
 どうしよう、お話がしたいのに、何を話せばいいのかわからない。
 胸の奥が温かくなる、この気持ちが不思議だった。もっと一緒にいたい。そんな想いが強く拡がる。
 けれど、そんな小さな願いに対しても、時間は残酷に過ぎる。
 日が暮れた森の中、名残を惜しむ時間も無く、隻眼の少年は別れを告げた。
 魔女の村に戻ったヒメカは、村を出たことを知られてしまい、魔女たちに強く叱られた。
 けれど、ヒメカの心は、隻眼の少年との出会いの嬉しさで満ちていた。
 
 あの日から、ヒメカは水晶玉の小さな傷を見るたび、少年のことを思い出して火照る顔を両手で覆っていた。
 顔と心が熱くなる。あの少年の笑顔、強さ、優しさに惹かれて。
 行き場の無い想いは、大きく膨らんでいくばかり。
「また…、会いたい…」
 水晶玉越しに見る、彼の笑顔。
 その笑顔で、ヒメカのことを見てほしい…と、想いを寄せた。
 けれど、数年後。
 逞しく成長した隻眼の少年の瞳が映していたのは、国の王女となる少女だった。仲良しの少年と2人、王女に手を差し伸べられ、騎士に選ばれていた。
信じられないことだった。
 王女は、多くの人々に笑顔で囲まれ、愛され、優しくされていた。そのたくさんの人々の中に、隻眼の少年もいる。
 ヒメカは目の前が真っ暗になった。
 違う、きっと違う。会えば、直接会えば、きっとあの笑顔をあたしに向けてくれるはず。
 小さな希望を胸に、ヒメカは再び魔女の村を出る。魔女たちは、ヒメカをとめようとした。しかし、ヒメカはそれを振り切った。箒に跨り、隻眼の少年が住む国へと飛んでいった。
 人間に恋をしてはだめ。魔女のひとりが叫んだ言葉も、ヒメカの耳には届かなかった。
 
 初めての人間の国。水晶玉で見てはいたものの、肌に感じる雰囲気が新鮮だった。
 国に入ってすぐ、町の外れで、隻眼の少年を見つけることができた。
「あ、あの…!」
 ヒメカはすぐに声をかけた。
 隻眼の少年は目を大きくして、呆然とした表情でヒメカを見つめた。
 無理も無かった。暗がりの森で、ほんの2時間ほどの幼い出会い。数年もの時が流れ、すぐに思い出せるはずが無かった。
「うわあ! 魔女だ!」
 誰かの大声が聞こえた。
 ヒメカに気付いた民が、騒ぎ始めた。
「魔女がいるぞ!」
「出て行け!!」
 険悪な気配を放つ民たちが次々と集まってくる。斧や鍬を手にじりじりと迫り、ヒメカを取り囲む。
 隻眼の少年は、何かを思い出そうと、ヒメカをじっと見ている。
「騎士さまは、王女さまのところへ! 他にも魔女がいるかもしれません!」
 民に急かされた隻眼の少年は息を飲み、弾かれたように走り去っていった。
「待って! あたしは…!」
 呼び止めようと声を上げる。勇気を振り絞って出た言葉は、民たちの喧騒に虚しく掻き消された。
 ヒメカは立ち竦んだ。
 どうして…。どうして、ヒメカは嫌われるの…? きっと、あの王女がひとり占めしようとしているんだ。あんなにいっぱいの人に囲まれて、全てをもっている。ヒメカは、ひとりだけでいいのに…。
 ガラスが割れるように、甲高い音をたてて何かが砕ける。
 体中を駆け巡る魔力の循環が、激しい感情に煽られて勢いを増す。
 赤い髪が鮮やかさを増し、燃え上がるように広がった。
「いつか…いつか必ず! 全部奪ってやる!!」
 悲しみの感情は黒く濁り、憎悪に変貌した。
 心に灯る恋慕は怒り狂い、嫉妬に豹変した。
 
 たったひとつすら手に入れられなかった魔女は、全てを持っている王女を憎み、陥れることを考えるようになった。
 
 
 
 床に転がった水晶玉を拾い上げる。
 水晶玉の小さな古傷。触れることすらできないくらい大切で、一途な気持ちの思い出が宿っている。
「好き…。好きなの…」
 だからお願い。もう一度、あの人を振り向かせて。神様でも悪魔でもいい。このお願いを叶えて。
 零れる涙。
 水晶玉を抱きしめて、赤い魔女は泣き崩れた。