日常記録やゲームの感想とか、創作や二次創作の絵や妄想を好き勝手に綴っていく、独り言の日記。
 


しばらく日記更新お休み


 

うちよそ話

日常の雑記 - 日記

あやさん宅のサラちゃんと、うちの子・サージェイドのお散歩っぽいお話です。
デートではないよ!(重要)
なるべく、あやさんのストーリーに影響が出てしまうような話にはしたくないのですが、矛盾点やら相違は必ず発生してしまうので、そこは…大目に見ていただきたく…!
 
曲は、何となく「Final Fantasy Tactics 主人公のテーマ」を聞きながら執筆。
星空広がる夜の海のイメージに似合う曲だと思う。


 夜の空。
 サージェイドは薄雲の上に寝そべって、天を見ていた。
 コウモリのような白い骨格だけの翼を広げ、羽ばたくことなく雲の流れに身を任せる。
「?」
 サラの意識の覚醒を感じて地上を見下ろす。
 いつもならサラはこの時間には眠っているはず。
 何かあったのかと気になったサージェイドは翼を広げ、地上へと急降下を始めた。
 
☆.*.:。・.☆.・。:.*.☆
 
 ひんやりと冷えた空気は、夜に相応しい澄んだ空気だった。
 サラは2階のベランダのフェンスに両腕を乗せて、ぼんやりと星空を眺めていた。月も眠っている今夜は、星たちが競い合うように輝いているけれど、それを邪魔するように雲が浮いていた。
 大きな溜め息をひとつ。
 真夜中に目が覚めてしまい、今に至る。
 時々、よくわからない焦燥感のような不安に襲われることがあった。
 今日も、そんな日。
 そよそよと吹く風が、サラの茶髪を揺らして通り過ぎていった。
 建物の黒いシルエット。深い紺色の空。散らばる星と、街の光。
 もの悲しげな風景は、流れる時間すらも、ゆっくりとさせてしまうように感じた。
 どこか遠くから微かな音が聞こえ始めて、サラは辺りを見回した。この時間は明かりが消えている家が多く、外灯の光が頼りだった。けれど、音を発しているようなものは見当たらない。
 何の音かな。だんだんと大きくなっているような。と、思った矢先。
 びゅうと空気を切り裂く音と共に、重たい空気が降ってきた。
 短い叫び声を上げ、サラは反射的にその場にしゃがみ込む。
 圧し掛かるような空気はすぐに消えて、サラは恐る恐る目を開いた。
 見上げれば、黒いパーカーを着た真っ白な肌の少年が、宇宙の景色のような皮膜の翼を広げて浮かんでいる。
「サ、サージェイドくん…?」
 サラは呆気に取られて二の句が告げず、目をぱちぱちとする。
「サラ。どーしタ?」
 不思議そうに見下ろしながら、サージェイドはフェンスの上に足音もなく猫のように着地した。翼を閉じると宇宙の景色の皮膜が消えた。
「サージェイドくんこそ、どうしたの? 急に来るからビックリしたよ!」
 サラは、ドキドキとする胸を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
「サラのこと、気にナった」
「え…?」
 意外な返答に、サラは首をかしげた。心配をかけてしまうようなことは思い当たらない。
「大丈夫だよ。…ちょっと、眠れなかっただけだから」
 まさか、目が覚めちゃったのに気付いて来てくれたのかな。いつも、どこにいるのかも分からない、不思議な神様。
 サラはサージェイドの頭を撫でようとして、手を伸ばす。
「ありがと…わっ!」
 突然、サージェイドが手を握り、にっと笑った。そのまま手を引かれて、サラはふわりとベランダから飛び上がった。
 ぐるりと反転する世界、頭上に広がる地面。
 落下の恐怖に身が硬直した。
 
☆.*.:。・.☆.・。:.*.☆
 
 優しい笑顔を向けられ、サージェイドはじっとサラを見る。
 サラは大丈夫と言ったが、大丈夫ではなさそうだった。優しい笑顔を見せることで、自分を我慢させているのだと分かった。
 サラが時々感じる不安は、残りの寿命の短さを、魂が訴えているのかもしれない。
 前世で多くの傷を受けた魂は、現世の思い出で塗り重ねられていても、その傷は癒えていない。これ以上、傷付いてほしくない。
 サージェイドはサラの手を握った。サラの手は夜風に冷えた手だった。
 サラに笑顔を見せる。
 王女よ。お前の役目はもう終わっているはずだ。だから、自由に生きていい。その優しさも、これからは自分のために使うべきだ。
 サラを捕らえる重力を、ほんの一瞬だけ消し去る。羽よりも軽くなったサラの手を引く。
 我が身を毛足の長いドラゴンの姿に変え、背中にサラを乗せた。
 
☆.*.:。・.☆.・。:.*.☆
 
 落ちると思った瞬間、サージェイドが毛むくじゃらのドラゴンの姿に変わって、サラはその背中に乗せられた。
 サラはやわらかな毛を撫でる。前に見せてもらったドラゴンの姿とは違っていた。
 ふわふわで温かくて、気持ちがいい。真っ白な毛に顔を埋めると、ほんのり甘い香りがした。いつもサージェイドが喫茶店で飲んでいる、ハチミツ入りのホットミルクの香りだった。
 ポンと弾けるような音がして、サラは体を震わせた。着ていたピンク色のパジャマが、ふかふかとした白い羽毛に包まれた着ぐるみのような服に変わっていた。
『夜は寒いだろ?』
「え、あれ?」
 頭の中に響く声に、サラは息を飲んだ。
「サージェイドくんが喋ってるの?」
『そうだよ。眠れないなら、散歩に行こうよ』
 そう言いながら、サージェイドは真っ白な羽毛の翼を羽ばたかせて上昇を始めた。
 自分の家がどんどん遠くなり、闇夜に消えていく。あっという間に、雲の上まで昇り詰めた。
 眼前に広がる灰色の雲の海。
 サージェイドが首を振り上げる仕草をすると、雲の海は広い道を作るように割れた。
 雲の隙間から、地上の夜景が見える。
 道路に沿って網の目のように複雑に交差する光の筋、高層ビル群の明かりがきらきらとして、輝く砂粒のようだった。
 夜空から見る大都市の美しさに、サラは感嘆の溜め息をした。
 あの光の粒のひとつひとつに、誰かがいるんだよね。何を考えて、何を思っているんだろう。
 みんなが、幸せになれますように。
 サラは胸の前で手を組んで、微笑んだ。
 
☆.*.:。・.☆.・。:.*.☆
 
 サージェイドは風に呼びかけ、サラの視界に邪魔な雲を避けさせた。
 空を飛ぶことは自由と解放のイメージがある、と、人間が言っていたのを耳にしたことがある。
 空を飛べば、サラは少しでも自由への気持ちを感じてくれるだろうか。不安の気持ちの原因に気付いてくれるだろうか。
 けれど、サラは地上を見下ろして、人々の幸せを祈っていた。王女としての魂が、そうさせてしまうのかもしれない。
 自分を押し殺し、全ての人々のために…。…もう、十分だろうに。
 しばらく空を飛んでいると、サラが海に行きたいと言ってきた。
 サラを海に連れて行くのは、気が引けてしまう。もし何かのきっかけで、魔女に操られた民たちに海に沈められてしまった前世を思い出してしまったら、サラがどうなってしまうか分からない。
 しかし、事情を知らないサラは、どうしても海に行きたいようだった。
 無理に断るわけにもいかず、海岸に向かう。
 暗がりの砂浜に静かに降り立ち、サラを背から降ろすと、少年の姿に変えた。サラは「ありがとう」と言って、頭を撫でてくれた。
 サラが一歩一歩踏みしめるように海へ近づいて、砂浜に腰を下ろす。
 真っ直ぐに海を見つめるサラの目は、この景色ではない、どこか遠くを見ているようにも見えた。
 サージェイドは、サラの隣に座って、片方の翼だけ羽毛の翼に変えてサラに潮風が当たらないように包んだ。サラは少しくすぐったそうに肩を竦めて、笑顔を見せた。
「私ね、海が好きなんだ」
 サラからの思いがけない言葉。
 何故だ。前世でのこととはいえ、自分が殺された場所である海が好きだなんて。忌避するべきではないのか。
 横目でサラを見ると、サラと目が合った。
 サラは、穏やかな顔をしていた。
 
☆.*.:。・.☆.・。:.*.☆
 
 少し迷った様子だったけれど、サージェイドは海へ連れて来てくれた。
 サラはふかふかの背中から降りる。サージェイドはいつもの少年の姿になった。
「ありがとう」
 お礼を言い頭を撫でると、サージェイドは目を細めて嬉しそうな顔をした。
波の音に満ちた世界。見渡す限りの黒い海。夜の海は、空との境界線がおぼろ気で、星たちの光がその境界線を保っていた。
 サラは吸い寄せられるように海に近づき、足先が濡れるか濡れないかのところで、ゆっくりと腰を下ろす。
 サージェイドが隣りに座って、温かい羽の翼で体を包んでくれた。
 本当に、不思議な神様だなぁと思う。神様は見た目通りの歳では無いことを知っているけれど、あどけない表情は普通の子供みたいで。魔法みたいなことができて。雪みたいに真っ白な肌は、誰の干渉も受け付けないような高潔さと、見失ったら消えてしまいそうな儚さを感じる。
 サラは、サージェイドが海に来るのを迷っていた様子を思い出し、少し申し訳ない気持ちになる。
「私ね、海が好きなんだ」
 サージェイドくんは嫌い?…と、言葉を続けようとしたけれど、隣に座っているサージェイドが横目で見てきたその赤い瞳がとても真剣で、サラは言葉を止めた。
 けれど、すぐにサージェイドはこちらに顔を向け、にっこりと笑った。
「オレも、好きダぞ」
 元気に答える様子に、サラは安心した。ただの思い過ごしだったのかな。
 サラは両腕を伸ばして伸びをした。
「サージェイドくんって、不思議な神様だよね。…ねえ、サージェイドくんは、どこから来たの?」
 
☆.*.:。・.☆.・。:.*.☆
 
「サージェイドくんって、不思議な神様だよね」
 と、サラが言った。
 サージェイドは、その言葉は感想であって深い意味は無いものだとすぐに分かった。
 厳密に言えば、自分は神ではない。では何なのかと問われても困る。願いを叶えるために存在しているのであって、それ以外は何も無い。
 もしサラが、“願いを叶える存在”に気付けば、こちらから願いを問うこともできるのに。
「ねえ、サージェイドくんは、どこから来たの?」
 と、次には興味を示す表情で問いかけてきた。
「ずっと、ズット、遠い。誰も知らナイ、空間」
 サージェイドは人語を発して答える。どうにも、人語の構成と発音は難しい。
「誰も知らない所なの…?」
 サラは驚いた表情と同時に、少し悲しそうな顔をした。
「ひとりだなんて、寂しくない?」
「……」
 サージェイドはぴくりと止まった。
 この問いは、サラが前世の時にも訊いてきたことだった。寂しいという感情が無いことを伝えたら、王女のサラは思い詰めたような顔をして「あなたは強いんですね」と呟いていた。
 あの時のサラが何を思ってそう問いかけてきたのか、今となっては知る術は無い。
 だが、これだけは分かる。あの時の返答は、間違いだったのだろう。
「今、サラやテンチョーたち、一緒。楽しイ!」
「本当? よかったぁ!」
 サラは万遍の笑顔で抱き付いてきた。
「私も、すっごく楽しいよ! …いつも、ありがとう」
 サラの声色が明るくなる。サラから不安の気配が薄らいでいた。
 サージェイドはサラに頬を寄せた。
 今はこれがサラにしてやれる精一杯だろう。
 水平線の空の色が変わり始めるころ、サラの意識は休息を欲しがっているようだった。うつらうつらと、今にも眠りに落ちそうになっている。
 サージェイドは、傾くサラの頭に額を合わせた。
『サラは、たくさんの人を幸せした。だから、次はサラが幸せになる番だよ』
 
☆.*.:。・.☆.・。:.*.☆
 
 突然のアラーム音。
 サラは勢いよく布団から飛び起きた。
「朝…!」
 カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。
 私、途中で寝ちゃったんだ…。サージェイドくんはお家に帰れたかな。
 サラは大きく伸びをして、ベッドから立ち上がると、カーテンを開けた。
 眩しい朝日が目に沁みる。全然眠くない。とても清々しい朝だった。
 体が軽い…。これも神様の力なのかなぁ。お礼をしなきゃ。
 サラは、ぐっと両手の拳を握った。
「サージェイドくんにクレープ買って行くからね!」


うちのサージェイドは、キャラスペックがぶっ壊れてるけど、固定してるのがある程度の容姿と「願いを叶える」っていうものだけだから、融通が利いてよその子とも仲良くやっていけてるのかもしれない。自分の世界が確立してないから、他の世界に順応できる。
元々、色々な登場人物が、サージェイドにさまざまなお願い事をして、その結果がどうなったか…という短編集的な話として練ってたキャラクターなので、何でも応用が利く。
人間たちの、悲しさ、愚かさ、優しさ、そういったものを詰めた話を書きたかったのです。
早い話が、サージェイドは主人公ではないのです。主人公に手を貸す味方であり、苦難を共にする仲間であり、または敵でもあり、他を一掃する兵器にして欲を満たす道具。
病気の少女と一緒に四葉のクローバーを探すことも、星間戦争の最終兵器を担うことも、何でもやれます。…それが、人の願いなら。
サージェイドの二つ名は「全てを満たす白い影」です。願いを叶える事によって人の心を満たすという意味と、最終的にはサージェイドが宇宙全体を包んで自身を満たすという意味があります。
うずしおが二次創作に首っ丈にならずに、もっと想像力とネタ構成能力があれば…。もしかしたら形になっていたかもしれない。
でも、だからこそ、水面下で眠っていたうちの子がこうして喋って動き回っているのは、親心にとてもとても嬉しい。
 
現実は、神に縋る思いで祈っても、願いは叶わないのですよ。
だからせめて、想像の中ではどんな願いも叶えてくれる存在が欲しかったんです。
そんな、弱い人間の愚かな妄想です。ただの厨二病だよ。