日常記録やゲームの感想とか、創作や二次創作の絵や妄想を好き勝手に綴っていく、独り言の日記。
 


しばらく日記更新お休み


 

うちよそ話

日常の雑記 - 日記

あやさん、いつもありがとうございますっ…!
描くか書くかしかできないですが、今後ともお付き合いください(*´ω`*)
 
 
ではでは。数日前から書いてたお話が完成したので…。
あやさん宅のレンリくんと、うちのサージェイドの小話でございます。
会話文が多めなので、状況描写が粗いです。申し訳ない。表現力がまだまだ未熟。


 人々が行き交う大きな街。今日の天気は快晴。当然人通りも多かった。
 レンリは人混みに紛れて、街中を歩いていた。正直言うと、人の多いところは嫌気がする。だが、サラが買い物好きだから少しくらいは街のものを知っておいたほうがいいと思い、出向いて来た。
『にぎやかですねぇ』
『人間がいっぱいいますぅ』
 レンリの頭の周りで、うさぎの霊魂たちがキャッキャと騒ぐ。
「うさたま、静かにしてろ」
 レンリは半ば呆れながら、うさぎの霊魂に言いつけた。しかし2匹のうさたまはレンリの注意を気に留めず、キョロキョロと街中を見回す。
 右も左も人だらけ。行き交う人々は、笑顔であったり何か思いつめた表情であったりと、それぞれの思いを胸に歩みを進めていた。
 大きなショーウインドウが並ぶ歩道を歩く。ガラスの奥の品物は、人々の目を釘付けにしようと派手な装飾品や、何に使うのか分からない機械が並べられている。
『わぁ~! レンリさま、あのお洋服、王女たまにお似合いかもですよぅ!』
『あれは何でしょう? とてもキレイな色ですねぇ~! いい匂いがします! 食べ物でしょうか?』
「オマエら…」
 レンリは呆れて目を細める。とはいえ、サラに似合う服というのが気になって視線を向けると、白いワンピースの服が飾られていた。無意識にサラの姿を重ね見て「まあ…悪くねーな」と呟いた。
 道の向こう側のも見に行こうと横断歩道を渡ったところで、頭の周りを飛んでいたうさたまたちがソワソワし始めた。
『ひえぇ~! レンリさまぁ~! あいつがいるですぅ~!』
 泣き入るような声を上げ、2匹のうさたまはポンと音を立てて姿を隠した。
 アイツ?…と、レンリが前方に目を凝らすと、十数人ほどの人だかりがあった。その中心に、居るはずないだろ思っていた存在が見える。
「おい、白いの。何してんだ」
 人だかりの隙間から声をかけると、黒いパーカーを着た真っ白な肌の少年は赤い瞳で見上げてきた。
「あら? お友達かしら? よかったわねぇ」
 取り囲んでいたひとりが声を上げると、周りの人たちも「よかったなぁ」「もう迷子にならないようにね」「またねぇ」と口々に言い、去って行った。
「あ? 迷子だ…?」
 意味が分からず、レンリは白い少年に怪訝な表情を向ける。そもそも、この少年に見える化け物…サージェイドとか言ったか。こいつとは友達ではない。それどころか気に食わない存在だ。
「迷子になる、なってナイ」
「どっちだよ」
 サージェイドのヘンテコな返事に、レンリは吐き捨てるように返した。
「ニンゲンいっぱい、いるから、来る、した。知るの、ため?」
「まだマトモにしゃべれねーのかよ。バカか」
 レンリは悪態をついた。何が言いたいのか全く理解できない。
 サージェイドは少し考え込んで、口を閉ざした。
『人間のことを知りたかったから来たんだ。ここは人間がいっぱいいるからね。人語はまだ難しいけど、人間に化けるのも上手くなったし』
 どうやらしゃべるのを諦めたらしい。レンリの思考に直接言葉を伝えながら、サージェイドはくるりと回ってみせた。背中からは骨格だけのような翼が小さく出てるし、尻尾も生えている。
「上手くなってねーよ。しっぽと翼見えてんぞ」
『人間たちは気にしてないみたいだよ』
「見て見ぬふりってやつだろ」
『あははっ。人間って面白いな』
 サージェイドはニッと笑った。
 レンリは大きなため息をつく。こいつはダメだ。このまま街にいさせたら大騒ぎになりそうだ。サラに迷惑がかかる可能性を考えると、放っておくわけにはいかない。
 周囲を見回し、人のいない路地を探すと、そこへ移動するよう促した。
 幅1メートル半ほどの薄暗い路地に入ると、街の騒音も小さくなる。奥へ進んだところで、レンリは立ち止った。建物の壁に背を預けて腕を組み、サージェイドを見下ろす。
「…で? 何でさっき通行人に囲まれてた? オマエ何かやらかしたんじゃねーだろな?」
 低く強い口調で言ってやったが、白い化け物はまったく反省する様子もなく、平然とした態度だった。こういう所も気に食わねえ。
『歩いていただけだよ。声をかけられるのは、人間の心理だから仕方ない』
「どういう意味だ?」
『ほら、人間って、崇拝対象を見ると拝みたくなるだろう? それと似たようなものだよ。気になって声をかけてくるみたい』
「神ぶってんじゃねーよ、化け物が。人を騙すのはやめろ」
『騙してないよ。人間が進化の過程で身に着けて本能化したものだ。太古から神に頼ってきた種族だからね。神だと勝手に思ってるのはそっちだし』
 淀みの無い返答に腹が立つ。こんな得体の知れない存在を、サラを始め周りの連中は気を許している。とんでもない危険存在だ。
「…テメェ、何が目的だ」
『だから、人間のことを知りたくて来…』
「そうじゃねぇッ!!」
 一瞬にして手から大鎌を出し、その刃をサージェイドの首に向ける。サージェイドは全く微動だにせず、じっと見上げているままだった。
『どうしてそんなに怖がっているんだ?』
「うるせぇよ。テメェが気に食わねーんだ」
 サージェイドはふぅんと頷いて、レンリに目を合わせたまま赤い爪の先で大鎌の刃をなぞる。なぞった跡には、はらはらと桜の花びらが落ちていった。
『そこまで警戒するってことは、君はオレのことを知ってるのか? あの赤い魔女の一族は、何か知ってたみたいだけど』
 サージェイドが薄く笑顔を浮かべる。
『オレの存在意義は【願いをかなえること】だ。それは未来永劫変わらない』
「願いを叶えてどうする?」
『オレは願いを叶える存在という概念。願いを叶える仕組みだから、願いを叶えることしかできないよ』
「嘘をつくな。ヒメカからは星を食らう化け物だと聞いてる」
『あの魔女、そこまで知ってるんだ…』
 サージェイドは少し驚いたような表情をした。そして、レンリ見上げながら大きくゆっくりと尻尾を振る。動く尻尾の軌跡に光の粒子が雪のように降った。
『原初回帰だよ。すべてのものは、元々ひとつだった。だから、ひとつに戻るのは当たり前だろ? 人間風に言うなら、全てはオレの所有物ってこと。だから星を吸収してオレの体に戻してるんだ。君だって、元を質せばオレの一部だよ』
「胸糞悪ぃこと言うんじゃねぇ!」
『オレに吸収されれば現実も天国も地獄も無い無限空間だ。全てがひとつで誰の意思もないから、争いも無い。平穏で平静な平和世界になる。これって人間たちが望んでることじゃない?』
「そんなの誰も望んじゃいねーよ!」
 レンリはカッとなってサージェイドの脇腹を掠めるように壁を蹴った。
『これはオレの願いでもあるんだよ。全てがひとつに戻れば、オレも元に戻れるはずなんだ。オレはあいつと、繋がってなきゃいけないんだ』
「アイツ…? どういう意味だ? テメェみたいなのがもう1体いるってのか?」
『君たちには永遠に理解できないよ。原初に戻れたら、また最初から始める。宇宙創成からやり直すから。…だから、いいだろう?』
「よくねーよ。意味解かんねー話の同意を俺に求めんじゃねえ!」
 レンリは歯を食いしばった。ふざけた話にこれ以上付き合っていられない。大鎌を握る手に力を入れると、サージェイドは俯き肩を震わせて笑った。
『…なぁんてね』
「は?」
『信じるか信じないかは、好きにしていい。君の魂すら摩耗して存在してない未来の可能性の話さ。もしかしたら遠い過去かもしれないし、別次元の出来事になるかもしれない』
「馬鹿にしてんのかテメェ…!」
 もう我慢できない。こいつはサラたちの前で猫かぶりをしてる。あどけない少年の姿をしていても、中身は未知の高位存在だ。
『ふああ~。よく寝ましたぁ』
『レンリさま、そろそろ帰り…って、ひえええ~! まだいるぅ~!!』
 ふいに出てきたうさたま2匹は、サージェイドを見ると互いに抱き合って縦に伸びながら悲鳴を上げ、再び姿を隠した。
 そんなうさたまを見て、サージェイドはきょとんとした顔をする。
 レンリはその隙に、魔力を込めて大鎌の柄を地面に突き立てた。
「縛!」
 黒い影が地を這い、素早くサージェイドの周りを回る。
『!』
 サージェイドは翼を広げてその場から飛び立とうとした。が、黒い影が生き物のように伸び上がり足に絡みつくと、衰えない勢いのままサージェイドの全身にまで縛り付けた。
「ガァア!」
 人間には出せない鳴き声を上げて、サージェイドが地面に両膝を着く。
 レンリはぐるると喉を鳴らせて睨んでくるサージェイドを見下ろして短く息を吐いた。本来は魂を捕える能力だが、この化け物にも効果がある。前は足止めに使ったが、今回は完全に動きを封じるつもりで全力を込めた。この影には魔力の流れを鈍らせる効力もある。この化け物にどこまで通用するかわからないが、魔法や神通力の類いは弱らせられるはず。
 ぎちぎちと締め付ける影にギャアギャアと甲高い悲痛な鳴き声を上げながら暴れる白い化け物を、レンリは黙ったまま見ていた。
 広げようとする翼から羽毛が生えては抜け落ち、光の粒になって消えていく。真っ白な肌には、赤い模様が浮き出ていて、さざ波を打つように獣毛が生えたり、鱗が生えたりを繰り返す。体の所々には大きな目が見開いて、こちらを睨みつけてくる。その様は、自分の姿形を見失ってるかのように見えた。
 レンリは顔を顰めた。気味が悪い。弟のように可愛がっているヤツの正体がこんなのだと知ってしまったら、サラはトラウマになるに決まってる。
 苦悶の表情で暴れているが、この化け物に痛覚があるとはとても思えない。
「痛がる演技はやめろ」
 そう言い放つと、何か言いたげな目線を向けてきたが、鳴き声を上げるのをやめてぐるると喉を鳴らした。
 やっぱり演技かよと内心で毒づいて、レンリはサージェイドを睨んだ。
 白い化け物はひとしきり暴れた後、ぐったりと体を地面に横たえて、おとなしくなった。
『オレをどうするつもり?』
 サージェイドが明らかに不服そうな表情を浮かべる。
「テメェの話は全く意味わかんねーけど、どうにかしたほうがいいってのはよく分かったぜ」
『消滅させたいのか? 不可能だよ。存在する全てを消すのと同義だからね』
 サージェイドの尻尾の先が大きなハサミのような形に変わる。
「させるかよ!」
 レンリは影を切ろうとする尻尾を大鎌の柄で弾き返して、もう一度魔力を込めた。新たに影が現れて、サージェイドの尻尾を捕える。完全に地面に張り付けられたサージェイドは、目を細めてレンリから視線を逸らした。
 レンリは思考を巡らせた。捕縛に成功したものの、こいつをどうすれば無力化できるか、まったく見当がつかなかった。さっきの話がもし本当なら、いずれこの世界を破壊される。
 サージェイドに一歩近づこうとしたその時、突然足元から何かが突き出してきて反射的に飛び退く。コンクリートを突き破って生えてきたのは、丸太のように大きな水晶の六角柱だった。呆気にとられていると、割れたコンクリートの隙間からずるずと送電線が伸びてきてレンリの足に絡み付いてきた。
 レンリは舌打ちして、大鎌の刃で送電線を薙ぎ払う。
 次の瞬間、建物の壁から鉄骨が進行を防ぐように飛び出してきて、鼻先を掠めた。半歩前に出ていたら頭を吹き飛ばされていたかもしれない。
「魔力を使わずに魔法を発動させやがんのか…?」
 魔法や妖術の類いとは全然違う。これはまるで【物】が化け物を守っているような…。
 レンリはサージェイドを見遣ると、サージェイドの体から目の無い蛇のようなものが数本生えていて、それが縛る影に食い付いて拘束を解こうとしていた。
「どこまでも気色悪ィな!!」
 声を荒げて、大きく踏み込む。大鎌を振り上げてサージェイドの首に向けて振り下ろす。するとサージェイドを守るように巨大な水晶の柱が地面から突き出した。大鎌の切っ先が水晶に刺さる。ぎしりとヒビが入った水晶が割れて、色とりどりの花びらに変化して散った。魂を狩る大鎌は、物質を通過することもできるはずのに。この水晶は普通の水晶ではないのか。
 大鎌を構え直し、再び振り下ろしても、同じように水晶の柱が突き出して大鎌の刃を受け止めた。
「くそっ…」
 水晶を叩き斬れるほどの力が入らない。影に魔力を使いすぎた。
『もういいだろう? 放してよ。ここまで力を抑え込まれるのは久しぶりだ。この姿じゃ苦しくて仕方ない…』
 少し弱っているのか、思考に伝わってくる声が掠れていた。
「サラたちに危害を加えないと約束しろ」
『約束も何も、最初からそのつもりだ。オレはサラを気に入っているしね。それに店長にサラたちを守るようにと願われているんだ。その為の対価ももらっている』
 サージェイドの話に、レンリはいつもサージェイドが心底嬉しそうに巽の料理を食べていることを思い出す。
「本当だろうな?」
『オレは願いを叶える為の存在だよ。叶えない願いは無い』
 サージェイドの体から生えている目の無い蛇のようなものが、いつの間にか小さな白い旗を口に銜えて振っていた。降参の意だろうか。馬鹿にされているような気分になりながらも、レンリは大鎌を握る手から力を抜いた。
「…信じてやるよ…」
 大鎌を手の中に戻す。それと同時に、サージェイドを捕えていた影が地面に吸い込まれるように消えていった。
「ウーン…」
 立ち上がったサージェイドは声を出して大きく伸びをする。突き出した水晶や鉄骨がきらきらと光の粒子となって辺りに散り、割れたコンクリートも最初に来た時の状態に戻っていた。
『人間の内臓って脆弱なんだね。いくつか潰れたよ。内臓は邪魔だな…』
 サージェイドが胸と腹のあたりを撫でながらくすくすと笑う。
「どうせ、本物じゃねーだろが」
 半眼でサージェイドを睨んで、レンリはふんと鼻を鳴らした。そしてすぐに、ハッとして目を見開いた。
 もしや、最初に言っていた「人間に化けるのが上手くなった」というのは、見た目ではなく内臓のことだったのか。ということは、人間の内臓組織を真似していたせいで、本当に痛みを感じていた可能性も…。
 サージェイドをちらりと見ると、いつもと変わらない無邪気な表情を浮かべている。さっきまでのことなど、無かったかのように気にしていない様子だった。
 レンリは数秒ほど間を置いて、口を開く。
「…悪かった。一応は謝ってやるよ」
『謝る? どうしてだ?』
 サージェイドは不思議そうに首を傾げた。
『君はサラが心配だからオレを警戒しているんだよね? 誰かのために行動するのは悪いことじゃないだろう? 群れを成す種族はそうやって生きてるんだから』
 と、満足そうに笑顔を浮かべる。
 それを見たレンリは、何も言えなくなった。
『君はサラが好きなんだろう?』
「ああ、そーだよ。でも、サラを手に入れたいなんてテメェに願わねーからな。ヒメカのこともそそのかすんじゃねーぞ」
 嫌味を込めて言い返してやったが、サージェイドは嫌味と思わなかったらしい。変わらぬ穏やかな表情だった。
『魔女の願いは魔女が決めることだよ。それとも、魔女の対価のことを気にしているのか?』
 サージェイドに懸念していたことを言われて、レンリは気を張った。
『価値は誰かが決めること。オレの存在を何であるか認識するのと同じだよ。そこに落ちている石だって、君の知らない世界では命よりも価値のあるものかもしれないよ?』
 と、サージェイドはレンリの足元に落ちている石ころを指さした。
「与太話はやめろ。オマエ、適当すぎだろ…」
 レンリは呆れ返って肩を竦めた。この化け物の話をいちいち真に受けていたら頭がおかしくなりそうだ。
 そろそろこの場を離れようと思ったところで、サージェイドが何かを思い付いた顔をして、つかつかと近づいて来た。
『ねえ!』
 伺い立てるような目付きで見上げてくる。
『君も最近の人間のことはよく知らないんだろう? 一緒に人間の街を見て回ろうよ』
「はぁ!? ふざけんな。テメェひとりで…」
 言いかけて、レンリは思い留まった。コイツひとりで街中を歩かせるのは非常に危険だ。それに、痛い思いをさせてしまった罪悪感が無いわけでもない。
「くそっ…。1時間だけな! 1時間経ったら帰れよ!?」
「はーイ!」
 機嫌よく軽い声で返事をしたサージェイドが、へらへらとした笑顔で両腕を振る。
 レンリは長い溜め息をした。
 やっぱ、コイツ気に食わねえ。