うちよそ話

日常の雑記 - 日記

仕事の疲れでぐったり気味でテンション低いが、絵も描かない文も書かない日が続くのには耐えられない。この性格は自滅に繋がるのも分かってる。
でも、できる内に、やっておきたいんだ。
 
あやさんの世界観お借りしてのお話です!
思い付きのお話で、モブ娘がよく出てくるのでご了承くだされ…。
あやさん宅のお話のサイドストーリーとして流し読みしていただければ幸い。


「おい、白いの」
「サージェイドくんだよ、もう」
 レンリに呼ばれて顔を上げると、後ろからサラに抱きしめられた。サージェイドは呼び主であるレンリの顔を見つめて、目をぱちぱちとさせる。呼ばれ方に関して、悪神と呼ばれる以外は特に気にしていない。名はあるが自分の存在の証明を確立するほどのものには至っていないからだった。
「巽サンは許可したけどよ。オマエ、接客なんかできるのか? 注文間違えずに聞けんのか? 客への言葉遣いはできんのか?」
 レンリが懸念を述べる。サージェイドはレンリの言葉に逐一頷きながら返事をした。
 今日は祝日という人間にとっての何かの特別な日らしい。サラは学校がお休みで、この喫茶店ルトロヴァイユでずっとアルバイトをすることになっている。
 巽の趣向で、今日は動物を模した着ぐるみパーカーを着て働くことになっていた。サラは桜色の兎で、レンリは黒灰色の狼の姿だった。
 自分は白い竜を模した姿だが、これは巽お手製ではなく、自分の体の一部を再構築したもの。これなら翼や尻尾はそのままでいいし、角を隠す必要がない。巽は猫の着ぐるみを着せたがっていたが、掌握外の物質で体を包むのは空間認識能力が低下するので、何とか言い訳をして断った。人間と違って目や耳などの器官で周囲を完全に確認しているわけではない。
「今日は祝日だから、お客さんがたくさんくるよ。みんな頑張ってね」
 巽がカウンターの奥から優しく声をかける。料理の下準備で忙しそうだった。
 今日はたくさんの来客が予想されていた。巽とサラとレンリでも大忙しになる。そこでサージェイドは店の手伝いをしようと決めたのだった。いつも世話になっているし、店で働くサラやレンリの行動を見ているから、だいたいの身のこなしは理解している。
「サージェイドくん、無理しねいでね」
 サラが笑顔でぴょんぴょんと跳ねる。兎であることを意識しての行動なのかはわからないが、とても楽しそうにしている。
「足引っ張んじゃねーぞ、白いの。…何かあったらすぐ俺に言え。フォローしてやるよ」
 レンリが柔らかな表情で言う。いつもなら毛嫌いして食って掛かってくる死神だが、今日は機嫌がよかった。サラの兎姿に浮かれているのを表に出さないように抑えている気配がする。
 開店時間となり、サラが出入り口の扉を開けると、さっそく男女の2人組が入ってくる。その後にサラと面識はないが同じ学校に通う女の子が入ってきた。レンリがこの店でアルバイトをするようになってから、良く来るようになった女の子だった。
「いらっしゃいませ!」
 3人で声を重ねる。サージェイドは水の入ったコップをトレーに乗せて、サラがテーブルへ案内した客のところへ行った。
「いラッシャいませ。ご…注文決まルしたら、呼ぶくださイ!」
「あら、ありがとう。ふふっ…」
 男女組の女性客が、サージェイドの言葉遣いに小さく笑い声を漏らす。サージェイドが首から下げているカードに目を遣ると「頑張ってね」と言ってくれた。カードは巽にもらったもので“上手に話せるように練習中です。がんばります”と書かれているものだった。
 次に常連の女の子のところへ行く。同じように声をかけてコップを置くと、女の子は無言のまま小さく頭を下げた。
「……」
 去り際に、サージェイドは女の子の様子を探った。強い願いを秘めた感情に気づいたからだった。この女の子が【願いを叶える存在】を認識し、願いを自分に言ってくれれば、どんな願いであろうと願いの重さに値するものと引き換えに叶えられる。
 …が、サージェイドはすぐに諦めた。事象や法則を操作する概念が、こんな姿で人間と同じように振舞っているとは思いもしないだろう。この世界に住まう無数の生命のひとつとしか思われていないだろうし、この店を出て数時間もすれば記憶の片隅に追いやられて忘れる程度でしかない。なにより、周りの者が見えないくらい、意識が一点に集中していた。
 ひと組、またひと組と、客の人数が増えていく。何度か店を訪れている客は、今日のサラやレンリの姿を可愛いと褒め、初めて来た客は風変わりな店だと面白がっていた。
 やがて、店内に流れる音楽よりも人々の話し声や物音のほうが大きくなる。
 サラとレンリは慌ただしく店内を速足で動き回り、巽も料理作りに手一杯で店内の様子まで見ていられないようだった。
 サージェイドは意識の輪を広げて、店内にいる者たちの様子を探り、待てないという欲求の強い客を優先に対応した。人間は時間をとても大切にする生き物だ。時間経過の不満は大きい。生きる時間が短いせいで、時間の価値を重く見ているからだろうか。
 ぽつりぽつりと人間ではない者もいるが、人間を真似て苛立った態度を見せる者もいる。その内の何人かはこちらの存在に気づいて恐怖し、白々しい謙虚な態度に変えた。
「ドラゴンさーん、お水くださーい」
 声をかけられて、サージェイドは振り返る。永い間ドラゴンの姿を模していた身としては、ドラゴンと認識されるのは嬉しいものだった。嬉々として水入りコップをテーブルに置くと、客は「あれ? しっぽ動いてる…?」と訝しんできた。無意識に尻尾を振っていたかもしれない。サージェイドは客にくるりと背を向け、腰を振って尻尾を揺らす仕草でこの場を誤魔化した。
 時折、悪戯な客がサラにちょっかいを出す。その度にレンリはサラを庇い、客への対応も当たり障りなく済ませていた。レンリは切れ者だ。こういった客の対応はレンリに任せておいたほうがいい。
 話に夢中になっている2人組の女性客に呼ばれ、サージェイドはすぐに向かった。2人は他愛のない世間話で盛り上がっていて、オムライスとグラタンを注文した。
 サージェイドはグラタンを頼んだ女性客の顔をじっと見た。食べたいと思っているのはハンバーグだからだった。何故、ハンバーグを食べたいと思っているのにグラタンを頼んだのか。
 注文を復唱しても2人の様子は変わらず、受けた通りの注文を巽に伝えた。
 …が。
「私、ハンバーグを頼んだんだけど?」
 オムライスとグラタンを持っていくと、グラタンを頼んだ女性客は困った表情を見せた。
「はんばーぐ…?」
 さっきと言っていることが違うのを不思議に思って、サージェイドは女性客の心を探った。悪意は無く、本当にハンバーグが食べたくてそれを注文したと思い込んでいた。それなら注文するときにそう言えばいいのに、どうして考えていることと違うことを言ったのか。
 サージェイドはこくこくと頷いてグラタンをトレーに戻す。誰も見ていない店内の端に行き、グラタンに掌を翳した。ほんの数秒でグラタンがハンバーグに変わり、皿もそれに合わせた平皿に変わる。
「おいオマエ、何しやがった」
 異変を感知したらしいレンリが、すぐに駆け寄ってきた。
 サージェイドはレンリを見上げてレンリの思考に言葉を送る。
『あの人間、言った料理と思ってた料理が違ってたんだ。オレは言われた注文通りにした。そうしたら違うって言われた。心に思ってた料理がよかったのか? 人間って言葉に出したほうが正しいんじゃなかったのか?』
「いや、その判断でいい。客の勘違いってヤツだな。しょうがねーな。…で、その料理は?」
『ハンバーグがいいみたいだから、分解してハンバーグに変えた』
「何だよそれ…」
『人間が昔に憧れて求めてた錬金術みたいなものだよ。元素分解して違うものに再構築する方法。この世界にある元素の種類は少ないから簡単なんだ。不足分の元素はオレの一部を使って、過剰分はオレが吸収した』
「食ったヤツに影響は?」
『長い間オレの中にあった元素が微量に入っているから、一時的に物質代謝率が上がって細胞が活性化するかも。十数年くらい老化しないだけだよ』
「影響あんのかよ。ンなモン食わせられるか。巽サンに作り直してもらう」
 そう言って、レンリはサージェイドが持っていたトレーを取り上げた。
『十数年なんて短過ぎて誤差にもならないよ』
「オマエの基準で考えんじゃねーよ。ホンっと適当な性格しやがって…。また何かあったら、絶対に俺に言えよ?」
 呆れ顔を浮かべて、レンリは巽のところへ向かう。巽に事情を話し始めた。
 サージェイドはそういうものなんだなと理解して、改めて人間の世界は難しいと思った。まだまだ存在差異の壁の厚さは果てしない。
「あの…、すみません…」
 小さな声がして、サージェイドは振り返った。常連の女の子がレンリを見て手を挙げている。レンリは女の子の小さな声が聞こえず、次の客の声に反応していた。
「お待たせす…しまシた!」
 サージェイドは代わりに常連の女の子に近づいた。
「あ…。あの…。紅茶、ください」
 女の子は表情を曇らせてサージェイドを見上げる。
「かしこマる…ましタ!」
 返事をしてテーブルの上の伝票立てから伝票をとると、その伝票にはレンリが書いた“紅茶”の文字が並んでいた。レンリに何度も紅茶を注文していたらしい。紅茶が大好きなのかと思いながら、サージェイドは巽に紅茶の注文を入れた。
 その後、サージェイドは常連の女の子が気になり、びたびその子の様子を探っていた。秘めた願いの感情は強いが、隠そうと必死だった。そして、その目はレンリばかりを追っていた。レンリがサラに何か話をすると少しだけ感情が暗くなり、レンリが接客で笑顔を見せると明るくなる。紅茶をレンリに頼んでは、ゆっくりと時間をかけて紅茶を飲み、冷え切った紅茶が無くなるとまたレンリに注文していた。
 やがて閉店時間となり、サラが客のいなくなった店の扉に「CLOSE」の札を下げる。サラとレンリは大きく息を吐いた。
「おつかれさま! 今日は忙しかったね。サージェイドくん、手伝ってくれてありがとう!」
 サラは疲れていながらも気分は晴れやかで元気だった。
「大きなトラブルも無かったしな」
 レンリがちらりとサージェイドを見て言う。注文の取り違いで騒動になる可能性があったことには触れなかった。
 そして、レンリは常連の女の子のことも客のひとりとしか思っていないようだった。
 
 翌日、サージェイドはルトロヴァイユの近くにある神社に来た。
 地面を啄んでいた雀の群れがサージェイドの気配に気づいて、一斉に飛び去って行く。
「サージェイドくん。来たのかい」
 穏やかな笑顔の初老の男が出迎えてくれた。ルトロヴァイユの常連客であり、この神社の主神とされている神だった。
「来タ!」
 サージェイドは返事をして手を振る。境内の御神木である大きな桜の樹の根本に並んで座り、主神に団子を渡した。昨日の手伝いで巽が「おこづかい」をくれて、それをここに来るまでにあった店で団子と交換してきた。この交換は面白い。対価で別のものを得るというのは、自分がやっている願いを叶える仕組みに似ている気がする。
「ありがとう。一緒に食べよう」
 主神が本堂に向かって手を差し出すと、本堂から霊体の狐が姿を現し、くるりと宙返りをすると人型に変化する。人に化けた狐は茶の入った湯飲みを2つ、盆に乗せて運んで来た。
 サージェイドと主神が狐から湯飲みを受け取ると、狐は一礼して本堂へ戻って行った。
「ここの生活には慣れたかい?」
「ウん。テンチョーも、サラも、レンリも、優しイ」
「それは良かったね」
 主神は嬉しそうに頷いた。
 サージェイドは、主神に異国から来た位の高い妖怪だと思われていた。どちらかというと自分は妖怪というより怪奇と言ったほうが合っている。けれど、自分の存在を説明するのが難しいから、妖怪のままでいいと思っていた。それに、かつてあらゆる願いを叶え続け信仰心を一身に受けていた存在だと知られてしまったら、また悪神とされて他の神々から今以上に力の隔絶をされてしまうかもしれない。これ以上、力の供給を減衰させられたら力の源である半身のほうが暴発する可能性がある。それだけは絶対に避けなければいけない。
 ぽかぽかとした日差しを浴びながら主神と言葉を交わし、団子を食べ終わると、サージェイドは伸びをした。
 人の気配を感じて顔を向けると、ひとりの女の子が境内に入って来る。昨日、ルトロヴァイユにずっと居て紅茶ばかり飲んでいた女の子だった。
「ああ、あの子は…」
 主神が小さく呟いて立ち上がった。
「少し、行ってくるよ」
 そう言って、主神は本堂の前で手を合わせる女の子へ近づいた。手を合わせる女の子の手を両手で包み、目を閉じる。本堂から霊体の狐が2匹出てきて、主神の左右に並んだ。2匹の狐は同時に宙返りをし、人の姿に化けると、両手を天へ向け空を仰いだ。
 主神と狐の姿が見えていない女の子は硬く目を閉じ、心の中で何度も何度も願いを唱え、祈りを捧げた。
 サージェイドは女の子の魂を探った。名前はユミコで、占いの雑誌を買い漁り、その日の運気が上がる小物や食べ物を調べ、“おまじない”という簡素な儀式のようなものに没頭している様子が視える。その行動は全て、ある人物へと向けられていた。ユミコの頭の中はその人物のことでいっぱいだった。
 ユミコは合わせていた手を解き、深く頭を下げると踵を返して帰って行った。
 戻ってきた主神が隣りに座り、口を開く。
「あの子は、君も見たことがあるだろう? この神社にも毎日のように来てくれるんだよ。内気な子だが、とても熱心でね。願い事を叶えてやりたいが、私には…。心の悲しみを和らげてやることしかできない…」
 噛みしめるようにゆっくりと話す主神は、歯がゆい気持ちで満ちていた。
 そうだろうなとサージェイドは思った。ユミコが願っていたのはレンリ、つまり死神と結ばれることだ。主神もレンリが死神だというのは知っている。レンリほどの魔力の持ち主を、「祈る」だけで並みの神が易々とどうにかできるはずがない。
 オレが代わりに…と、言いたい気持ちを抑えて、サージェイドは俯いた。
「すまないね、暗い話をしてしまった」
 主神が苦笑いを浮かべる。
「サージェイドくん、ルトロヴァイユにあの子が来たら、見守ってやっておくれ」
 
日を置かずして、ユミコは再びルトロヴァイユに来店した。今日はレンリは休みで、学校帰りのサラが和風メイド姿でアルバイトをしていた。
 サージェイドはいつも座っているカウンター端の席で、ユミコの様子を探る。
 ユミコは店内を見回し、サラに声をかけられると紅茶を頼んだ。紅茶を飲みながら15分ほど時間を過ごし、レンリが居ないと分かると早々に会計を済ませて店を出て行った。
 次の日はサラが休みだった。ユミコは学校が終わると迷わず来店し、レンリに何度も紅茶を頼む。片手には手紙が握られていた。手紙の内容を透視すると、レンリへの想いが綴られている恋文だった。けれど、ユミコにはその手紙を渡す勇気が無く、閉店の時間を迎えた。
 手紙を渡すことすらできないなんて、不憫な人間だなとサージェイドは思った。この世界の物理法則に囚われている人間ができることなんて、極々限られたことだけなのに、その中のできることすら、できずにいる。
 ユミコの強い想いが【恋】であることは、サージェイドにも察しがついていた。サラも求めていた【恋】というものは、幸せな気分にすることも、人を狂わせるほどの強い感情を生み出すこともある。発生原理は不明だが、形式は様々で派生は複雑だ。唯一存在である自分には種族繁栄の本能について全く分からないが、【恋】というものは子孫を残すためのものとは少し違うようで、本能というよりは理性に寄ったものの気がする。
「【恋】って、ナンダロウ…」
 人間を真似て独り言を言ってみる。言ったところで何も変わらないのだけど。
「辞書でも読んでろ」
 レンリがテーブルを拭きながら不愛想に言った。
 この日、ユトロヴァイユでアルバイトを終えたレンリが店を出ると、サージェイドはその後を追った。
「あ? 付いて来んなよ」
 レンリはすぐに気付いて、歩きを止めた。目を細めて、威嚇するように見てくる。
 ユミコのことを訊いてみると、レンリはふんと鼻を鳴らした。
「あんだけ見られてて、気付いてないわけねーだろ」
 それならと、話を続けようとしたが、その前にレンリが口を開いた。
「テメェ…。あの女の願いを叶えようなんて考えてやがんのか?」
 鋭く睨んでくる。それに呼応するように、夕日に照らされた周辺で魔力の流れが活発になった。この魔力の流れは、先制攻撃してくる気でいる。
 サージェイドは両手をぷらぷらと振って魔力の気流を乱した。力づくでレンリをどうにかしたいわけではない。
 それに。
『オレに願いを叶えるか叶えないかの決定権は無いよ』
 否定も肯定もしないし、できない。
「だったら黙ってろ。オマエの出る幕じゃねえ」
 そう言い捨てて、レンリが歩き始めた。背中からぴりぴりとした感情が伝わってくる。
『あの人間は、もうすぐ死ぬ。君にも視えてるだろう?』
 ユミコの寿命は残りわずかだった。今の未来の分岐を進めば、交通事故で頭を打って全身麻痺となり、微かな望みをかけた手術も失敗して死ぬ。
「だからどうした」
 溜め息交じりで、レンリが横目で振り返る。
『分かってるなら、少しくらい声をかけてあげるのが人間じゃないのか? 君のことが好きなんだよ?』
「俺はもう人間じゃねーよ」
 やれやれというように、レンリは再び足を止めた。
「テメェ、適当な性格のクセに、変なところに拘りやがるな。あの女に無駄な期待させてどうする? 死ぬ悔いが残るだけだ。夢も恋も、追いかけてる時が幸せな場合もあるんだ。オマエが思っている以上に、人間ってのは面倒くせーんだよ。よーく覚えときな!」
 一方的に話し、レンリは地面を蹴るように跳び上がって、日の暮れた闇夜に消えた。
 サージェイドは街灯が点き始めた道で、静かに立ち尽くした。
 
 それから1か月も経たないうちにユミコは交通事故に遭い、視えていた通りの最期を迎えた。
 けれど、サージェイドはユミコの魂を見送りながら、不思議な気持ちでいた。あんなにも恋焦がれていた想いは、死を迎えることで平静なものへと変わっていたからだった。レンリを想う気持ちは確かにあったが、それは叶わないものだと知っていたらしい。
 レンリが言っていた通り、レンリを追い続けることが毎日の楽しみであり、その楽しみの奥には想いが叶わない苦痛とサラへの嫉妬も隠れていた。
 ユミコの魂は複雑に絡む感情から解放されて、安らぎを得ていた。


うちよそ

日常の雑記 - 日記

創作 サージェイドるびさん宅のセシルちゃんとうちのサージェイドご一緒させていただきました。
空の散歩も行けるんじゃないかと…。
割と思った通りに描けて嬉しい。
でも背景はもっともっと頑張らないとダメだね。技術上げていきたい。
 
 
結局、良いか悪いかは分からないけど、自分はお人よしだなと思う。
自分が我慢すれば丸く収まるから、そういう安全な生き方しかできないんだろうね。
仕方ない。…って言葉が口癖になってる。いろいろと諦めてる証拠だと思った。
でも、このままであるなら、次は二度と無い。


サージェイド(鉱物)

創作 サージェイドうちの子・サージェイド。
いつもと違う描き方したら自分の絵じゃないみたいになった。
でもこれはこれで描いてて楽しい。


絵と音楽

日常の雑記 - 日記

創作 サージェイド今日展示物に掲載したサージェイドの下書き。創作絵を展示物に上げるのは9年半ぶりだな。
レイストームの美しい曲聞きながらガリガリ描いてた。いい曲聞くとテンション上がる。
 
音楽の無い生活なんて考えられないくらい、生活に密着してる。
自分の気に入った曲を聞きながら時間を過ごせるなんて幸せだよね。


わあああ!!

日常の雑記 - 日記

見て! 見てかわいい!!(謎の自慢)
あやさんが、サラちゃんと、うちのサージェイドでアクリルスタンド作ってくださって、しかもそれを頂いたのです!!
さっそく机の上に飾ってニヤニヤしてる。発色キレイだなぁ(*´▽`*)
 
あやさん、ありがとうございますー!!
お手紙に絵も添えていただいて、嬉しくて部屋の中走り回りました(近所迷惑)
こちらこそ、創作の楽しさを思い出させていただいて、感謝してます!
うずしおは、過去に創作やってた時(このサイトができる前)は誰にも知られず孤独だったもので、こうしてうちの子と世界観共有していただけてとても満たされてる気持ちです。
私のほうこそ、感謝しております(*´ω`*)
 
 
お礼といってはなんですが、サラちゃん描かせていただきました!
あれです、数日前に日記で書いたレンリくんのお話に出てきた白いワンピースのイメージでございます。
あやさん、本当にありがとうございますッ!


うちよそ話

日常の雑記 - 日記

ガァアアアア!!! 頭痛い!! 低気圧滅びろ。
くそ…頭痛が酷いと密かに「特殊能力に目覚める」的な期待してしまう。
中弐病が卒業できない。
 
 
はい、それでは、うちよそ話というか、あやさんの設定お借りしたお話でございます。
昨日の日記のお話から派生した、レンリくんとサラちゃんのお話です。だだだっと書いたので超短文です。
毎度のことながら、あやさん宅の子とは相違がありますので、ご了承ください。


 天使。
 そう、天使だな。
 白くて、綺麗で。まさに、それ。
 死神が天使を好きになって、何が悪い。
 
 
 レンリはルトロヴァイユの扉を開いた。
 今日のサラはバイトではない。学校帰りにここに立ち寄るであろう目測もついていた。
 思った通り、カウンター席にサラの後姿を見つける。
「レンリ、来タ」
 白い化け物が振り返る。
「レンリさん、こんにちは」
 サラも気づいて振り返る。
 レンリはサラの隣に座っているサージェイドを半眼で睨み飛ばしてから、サラへ近づいた。
「サラ。ちょっと付き合え」
 
 賑やかな街。今日も人通りは多かった。
 レンリは脇目も振らずに進んだ。目的は決まっている。それ以外に用はない。
 少し後ろを、制服姿のサラがついてくる。逸る気持ちを堪えて、サラと離れないように歩いた。
 着いたのは、魅卯が見つけた白いワンピースの飾られている店。
 ショーウインドウに飾られているオフショルダーの白いワンピース。スカートはフレアになっていて、その裾は大きなレースに囲まれている。レンリはそれを見て、小さく頷いた。
 店内に入ると、すぐに店員の女性に声をかける。
「あれ、こいつに着せていいか」
「かしこまりました」
 店員はにこやかに応え、慣れた手つきでショーウインドウに飾られている白いワンピースをマネキンから脱がせる。「どうぞ、こちらへ」と、サラを試着室へ促した。
 サラは言われるままに試着室へ入る。数秒ほどして、サラがひょこりとカーテンの奥から顔を出した。
「あ…あの、レンリさん?」
「何だ」
「こんな大人っぽい服、私には…」
「いいから着てみろよ」
 戸惑うサラに、レンリは優しく言った。
 ほんの2分ほどの時間が、とても待ち遠しかった。遠慮がちにカーテンを開いて、白いワンピース姿のサラが現れる。
 レンリは無言になって見入った。透き通るような清らかな白。普段は見ることのない艶やかな肩。はにかんだ表情のサラが動くたびにふわりふわりと揺れるスカートは、爽やかなそよ風を感じさせる。輝かしい魂に、実に相応しい。想像通り。いや、想像以上だ。
 サラが、無言になったレンリに焦りを見せる。
「やっぱり、変だよね!?」
「悪ィ。見惚れてた。スゲー似合ってるぜ」
 そう言ってやると、サラは顔を赤くして唇を噛み、目を逸らした。そんなサラを抱き寄せたい衝動を抑えて、店員の方を向く。
「これにする」
「ええ…っ」
 サラが慌ててレンリと店員を交互に見る。
「買ってやるよ。気に入った」
 レンリはサラに向かって口の端を上げて笑った。
 店員がこのまま着て帰るというのはどうかと提案してきた。「ああ」と答えると、店員はサラの制服を丁寧にたたみ、手提げ袋に入れてくれた。
 レンリは手提げ袋を受け取って、改めてサラを見る。
 何か…。足りない気がする。似合っているはずなのに、この違和感はなんだろうかと悩んでいると、ポンと音を立ててうさぎの霊魂の片割れが現れる。サラに似合うワンピースを見つけてくれた魅卯だった。当然、サラや店員には見えていない。
『アレですっ!』
 魅卯が自信満々に指さしたのは、店内の奥にある靴やサンダルや並べられている壁棚。その中の白い編み上げのヒールサンダルだった。
 レンリは、ふむ…と頷いて、店員に白いヒールサンダルを持ってくるように頼んだ。
 サラにヒールサンダルを渡し、ローファーから履き替えさせる。サラは慣れないヒールに少しふらつきながら、まっすぐに背筋を伸ばした。
 白いワンピースと白いヒールサンダル。同色の調和はとてもよい感じだった。
 それに、いつもより背の高いサラの見上げてくる顔が近い。
「悪くねーな」
 レンリは喜色満面の表情を浮かべた。
 
「ほ、本当にいいんですか!?」
 店を出て隣を歩くサラが、申し訳なさそうな顔をする。
「俺が気に入ったんだ。文句はねーだろ? そんな顔するなよ」
 そう言うと、サラはこちらの意を察したらしく、朗らかな笑顔を見せた。
「ありがとうございます! この服に似合うような素敵な女性になりたいです」
「十分似合ってんだろ」
 レンリは満足して頷いた。
 歩道に並ぶショーウインドウ。そのガラスに映る自分とサラ。死神が天使を連れて歩いているようだった。
「ミウのセンス、なかなかいいな…」
「え?」
「ははっ! 何でもねえ」
 レンリは上機嫌で笑った。
「今度から、俺が誘うときは、それ着て来い」
 
 
 魔女だって恋するんだ。
 死神だって恋してもいいだろ。


うちよそ話

日常の雑記 - 日記

あやさん、いつもありがとうございますっ…!
描くか書くかしかできないですが、今後ともお付き合いください(*´ω`*)
 
 
ではでは。数日前から書いてたお話が完成したので…。
あやさん宅のレンリくんと、うちのサージェイドの小話でございます。
会話文が多めなので、状況描写が粗いです。申し訳ない。表現力がまだまだ未熟。


 人々が行き交う大きな街。今日の天気は快晴。当然人通りも多かった。
 レンリは人混みに紛れて、街中を歩いていた。正直言うと、人の多いところは嫌気がする。だが、サラが買い物好きだから少しくらいは街のものを知っておいたほうがいいと思い、出向いて来た。
『にぎやかですねぇ』
『人間がいっぱいいますぅ』
 レンリの頭の周りで、うさぎの霊魂たちがキャッキャと騒ぐ。
「うさたま、静かにしてろ」
 レンリは半ば呆れながら、うさぎの霊魂に言いつけた。しかし2匹のうさたまはレンリの注意を気に留めず、キョロキョロと街中を見回す。
 右も左も人だらけ。行き交う人々は、笑顔であったり何か思いつめた表情であったりと、それぞれの思いを胸に歩みを進めていた。
 大きなショーウインドウが並ぶ歩道を歩く。ガラスの奥の品物は、人々の目を釘付けにしようと派手な装飾品や、何に使うのか分からない機械が並べられている。
『わぁ~! レンリさま、あのお洋服、王女たまにお似合いかもですよぅ!』
『あれは何でしょう? とてもキレイな色ですねぇ~! いい匂いがします! 食べ物でしょうか?』
「オマエら…」
 レンリは呆れて目を細める。とはいえ、サラに似合う服というのが気になって視線を向けると、白いワンピースの服が飾られていた。無意識にサラの姿を重ね見て「まあ…悪くねーな」と呟いた。
 道の向こう側のも見に行こうと横断歩道を渡ったところで、頭の周りを飛んでいたうさたまたちがソワソワし始めた。
『ひえぇ~! レンリさまぁ~! あいつがいるですぅ~!』
 泣き入るような声を上げ、2匹のうさたまはポンと音を立てて姿を隠した。
 アイツ?…と、レンリが前方に目を凝らすと、十数人ほどの人だかりがあった。その中心に、居るはずないだろ思っていた存在が見える。
「おい、白いの。何してんだ」
 人だかりの隙間から声をかけると、黒いパーカーを着た真っ白な肌の少年は赤い瞳で見上げてきた。
「あら? お友達かしら? よかったわねぇ」
 取り囲んでいたひとりが声を上げると、周りの人たちも「よかったなぁ」「もう迷子にならないようにね」「またねぇ」と口々に言い、去って行った。
「あ? 迷子だ…?」
 意味が分からず、レンリは白い少年に怪訝な表情を向ける。そもそも、この少年に見える化け物…サージェイドとか言ったか。こいつとは友達ではない。それどころか気に食わない存在だ。
「迷子になる、なってナイ」
「どっちだよ」
 サージェイドのヘンテコな返事に、レンリは吐き捨てるように返した。
「ニンゲンいっぱい、いるから、来る、した。知るの、ため?」
「まだマトモにしゃべれねーのかよ。バカか」
 レンリは悪態をついた。何が言いたいのか全く理解できない。
 サージェイドは少し考え込んで、口を閉ざした。
『人間のことを知りたかったから来たんだ。ここは人間がいっぱいいるからね。人語はまだ難しいけど、人間に化けるのも上手くなったし』
 どうやらしゃべるのを諦めたらしい。レンリの思考に直接言葉を伝えながら、サージェイドはくるりと回ってみせた。背中からは骨格だけのような翼が小さく出てるし、尻尾も生えている。
「上手くなってねーよ。しっぽと翼見えてんぞ」
『人間たちは気にしてないみたいだよ』
「見て見ぬふりってやつだろ」
『あははっ。人間って面白いな』
 サージェイドはニッと笑った。
 レンリは大きなため息をつく。こいつはダメだ。このまま街にいさせたら大騒ぎになりそうだ。サラに迷惑がかかる可能性を考えると、放っておくわけにはいかない。
 周囲を見回し、人のいない路地を探すと、そこへ移動するよう促した。
 幅1メートル半ほどの薄暗い路地に入ると、街の騒音も小さくなる。奥へ進んだところで、レンリは立ち止った。建物の壁に背を預けて腕を組み、サージェイドを見下ろす。
「…で? 何でさっき通行人に囲まれてた? オマエ何かやらかしたんじゃねーだろな?」
 低く強い口調で言ってやったが、白い化け物はまったく反省する様子もなく、平然とした態度だった。こういう所も気に食わねえ。
『歩いていただけだよ。声をかけられるのは、人間の心理だから仕方ない』
「どういう意味だ?」
『ほら、人間って、崇拝対象を見ると拝みたくなるだろう? それと似たようなものだよ。気になって声をかけてくるみたい』
「神ぶってんじゃねーよ、化け物が。人を騙すのはやめろ」
『騙してないよ。人間が進化の過程で身に着けて本能化したものだ。太古から神に頼ってきた種族だからね。神だと勝手に思ってるのはそっちだし』
 淀みの無い返答に腹が立つ。こんな得体の知れない存在を、サラを始め周りの連中は気を許している。とんでもない危険存在だ。
「…テメェ、何が目的だ」
『だから、人間のことを知りたくて来…』
「そうじゃねぇッ!!」
 一瞬にして手から大鎌を出し、その刃をサージェイドの首に向ける。サージェイドは全く微動だにせず、じっと見上げているままだった。
『どうしてそんなに怖がっているんだ?』
「うるせぇよ。テメェが気に食わねーんだ」
 サージェイドはふぅんと頷いて、レンリに目を合わせたまま赤い爪の先で大鎌の刃をなぞる。なぞった跡には、はらはらと桜の花びらが落ちていった。
『そこまで警戒するってことは、君はオレのことを知ってるのか? あの赤い魔女の一族は、何か知ってたみたいだけど』
 サージェイドが薄く笑顔を浮かべる。
『オレの存在意義は【願いをかなえること】だ。それは未来永劫変わらない』
「願いを叶えてどうする?」
『オレは願いを叶える存在という概念。願いを叶える仕組みだから、願いを叶えることしかできないよ』
「嘘をつくな。ヒメカからは星を食らう化け物だと聞いてる」
『あの魔女、そこまで知ってるんだ…』
 サージェイドは少し驚いたような表情をした。そして、レンリ見上げながら大きくゆっくりと尻尾を振る。動く尻尾の軌跡に光の粒子が雪のように降った。
『原初回帰だよ。すべてのものは、元々ひとつだった。だから、ひとつに戻るのは当たり前だろ? 人間風に言うなら、全てはオレの所有物ってこと。だから星を吸収してオレの体に戻してるんだ。君だって、元を質せばオレの一部だよ』
「胸糞悪ぃこと言うんじゃねぇ!」
『オレに吸収されれば現実も天国も地獄も無い無限空間だ。全てがひとつで誰の意思もないから、争いも無い。平穏で平静な平和世界になる。これって人間たちが望んでることじゃない?』
「そんなの誰も望んじゃいねーよ!」
 レンリはカッとなってサージェイドの脇腹を掠めるように壁を蹴った。
『これはオレの願いでもあるんだよ。全てがひとつに戻れば、オレも元に戻れるはずなんだ。オレはあいつと、繋がってなきゃいけないんだ』
「アイツ…? どういう意味だ? テメェみたいなのがもう1体いるってのか?」
『君たちには永遠に理解できないよ。原初に戻れたら、また最初から始める。宇宙創成からやり直すから。…だから、いいだろう?』
「よくねーよ。意味解かんねー話の同意を俺に求めんじゃねえ!」
 レンリは歯を食いしばった。ふざけた話にこれ以上付き合っていられない。大鎌を握る手に力を入れると、サージェイドは俯き肩を震わせて笑った。
『…なぁんてね』
「は?」
『信じるか信じないかは、好きにしていい。君の魂すら摩耗して存在してない未来の可能性の話さ。もしかしたら遠い過去かもしれないし、別次元の出来事になるかもしれない』
「馬鹿にしてんのかテメェ…!」
 もう我慢できない。こいつはサラたちの前で猫かぶりをしてる。あどけない少年の姿をしていても、中身は未知の高位存在だ。
『ふああ~。よく寝ましたぁ』
『レンリさま、そろそろ帰り…って、ひえええ~! まだいるぅ~!!』
 ふいに出てきたうさたま2匹は、サージェイドを見ると互いに抱き合って縦に伸びながら悲鳴を上げ、再び姿を隠した。
 そんなうさたまを見て、サージェイドはきょとんとした顔をする。
 レンリはその隙に、魔力を込めて大鎌の柄を地面に突き立てた。
「縛!」
 黒い影が地を這い、素早くサージェイドの周りを回る。
『!』
 サージェイドは翼を広げてその場から飛び立とうとした。が、黒い影が生き物のように伸び上がり足に絡みつくと、衰えない勢いのままサージェイドの全身にまで縛り付けた。
「ガァア!」
 人間には出せない鳴き声を上げて、サージェイドが地面に両膝を着く。
 レンリはぐるると喉を鳴らせて睨んでくるサージェイドを見下ろして短く息を吐いた。本来は魂を捕える能力だが、この化け物にも効果がある。前は足止めに使ったが、今回は完全に動きを封じるつもりで全力を込めた。この影には魔力の流れを鈍らせる効力もある。この化け物にどこまで通用するかわからないが、魔法や神通力の類いは弱らせられるはず。
 ぎちぎちと締め付ける影にギャアギャアと甲高い悲痛な鳴き声を上げながら暴れる白い化け物を、レンリは黙ったまま見ていた。
 広げようとする翼から羽毛が生えては抜け落ち、光の粒になって消えていく。真っ白な肌には、赤い模様が浮き出ていて、さざ波を打つように獣毛が生えたり、鱗が生えたりを繰り返す。体の所々には大きな目が見開いて、こちらを睨みつけてくる。その様は、自分の姿形を見失ってるかのように見えた。
 レンリは顔を顰めた。気味が悪い。弟のように可愛がっているヤツの正体がこんなのだと知ってしまったら、サラはトラウマになるに決まってる。
 苦悶の表情で暴れているが、この化け物に痛覚があるとはとても思えない。
「痛がる演技はやめろ」
 そう言い放つと、何か言いたげな目線を向けてきたが、鳴き声を上げるのをやめてぐるると喉を鳴らした。
 やっぱり演技かよと内心で毒づいて、レンリはサージェイドを睨んだ。
 白い化け物はひとしきり暴れた後、ぐったりと体を地面に横たえて、おとなしくなった。
『オレをどうするつもり?』
 サージェイドが明らかに不服そうな表情を浮かべる。
「テメェの話は全く意味わかんねーけど、どうにかしたほうがいいってのはよく分かったぜ」
『消滅させたいのか? 不可能だよ。存在する全てを消すのと同義だからね』
 サージェイドの尻尾の先が大きなハサミのような形に変わる。
「させるかよ!」
 レンリは影を切ろうとする尻尾を大鎌の柄で弾き返して、もう一度魔力を込めた。新たに影が現れて、サージェイドの尻尾を捕える。完全に地面に張り付けられたサージェイドは、目を細めてレンリから視線を逸らした。
 レンリは思考を巡らせた。捕縛に成功したものの、こいつをどうすれば無力化できるか、まったく見当がつかなかった。さっきの話がもし本当なら、いずれこの世界を破壊される。
 サージェイドに一歩近づこうとしたその時、突然足元から何かが突き出してきて反射的に飛び退く。コンクリートを突き破って生えてきたのは、丸太のように大きな水晶の六角柱だった。呆気にとられていると、割れたコンクリートの隙間からずるずと送電線が伸びてきてレンリの足に絡み付いてきた。
 レンリは舌打ちして、大鎌の刃で送電線を薙ぎ払う。
 次の瞬間、建物の壁から鉄骨が進行を防ぐように飛び出してきて、鼻先を掠めた。半歩前に出ていたら頭を吹き飛ばされていたかもしれない。
「魔力を使わずに魔法を発動させやがんのか…?」
 魔法や妖術の類いとは全然違う。これはまるで【物】が化け物を守っているような…。
 レンリはサージェイドを見遣ると、サージェイドの体から目の無い蛇のようなものが数本生えていて、それが縛る影に食い付いて拘束を解こうとしていた。
「どこまでも気色悪ィな!!」
 声を荒げて、大きく踏み込む。大鎌を振り上げてサージェイドの首に向けて振り下ろす。するとサージェイドを守るように巨大な水晶の柱が地面から突き出した。大鎌の切っ先が水晶に刺さる。ぎしりとヒビが入った水晶が割れて、色とりどりの花びらに変化して散った。魂を狩る大鎌は、物質を通過することもできるはずのに。この水晶は普通の水晶ではないのか。
 大鎌を構え直し、再び振り下ろしても、同じように水晶の柱が突き出して大鎌の刃を受け止めた。
「くそっ…」
 水晶を叩き斬れるほどの力が入らない。影に魔力を使いすぎた。
『もういいだろう? 放してよ。ここまで力を抑え込まれるのは久しぶりだ。この姿じゃ苦しくて仕方ない…』
 少し弱っているのか、思考に伝わってくる声が掠れていた。
「サラたちに危害を加えないと約束しろ」
『約束も何も、最初からそのつもりだ。オレはサラを気に入っているしね。それに店長にサラたちを守るようにと願われているんだ。その為の対価ももらっている』
 サージェイドの話に、レンリはいつもサージェイドが心底嬉しそうに巽の料理を食べていることを思い出す。
「本当だろうな?」
『オレは願いを叶える為の存在だよ。叶えない願いは無い』
 サージェイドの体から生えている目の無い蛇のようなものが、いつの間にか小さな白い旗を口に銜えて振っていた。降参の意だろうか。馬鹿にされているような気分になりながらも、レンリは大鎌を握る手から力を抜いた。
「…信じてやるよ…」
 大鎌を手の中に戻す。それと同時に、サージェイドを捕えていた影が地面に吸い込まれるように消えていった。
「ウーン…」
 立ち上がったサージェイドは声を出して大きく伸びをする。突き出した水晶や鉄骨がきらきらと光の粒子となって辺りに散り、割れたコンクリートも最初に来た時の状態に戻っていた。
『人間の内臓って脆弱なんだね。いくつか潰れたよ。内臓は邪魔だな…』
 サージェイドが胸と腹のあたりを撫でながらくすくすと笑う。
「どうせ、本物じゃねーだろが」
 半眼でサージェイドを睨んで、レンリはふんと鼻を鳴らした。そしてすぐに、ハッとして目を見開いた。
 もしや、最初に言っていた「人間に化けるのが上手くなった」というのは、見た目ではなく内臓のことだったのか。ということは、人間の内臓組織を真似していたせいで、本当に痛みを感じていた可能性も…。
 サージェイドをちらりと見ると、いつもと変わらない無邪気な表情を浮かべている。さっきまでのことなど、無かったかのように気にしていない様子だった。
 レンリは数秒ほど間を置いて、口を開く。
「…悪かった。一応は謝ってやるよ」
『謝る? どうしてだ?』
 サージェイドは不思議そうに首を傾げた。
『君はサラが心配だからオレを警戒しているんだよね? 誰かのために行動するのは悪いことじゃないだろう? 群れを成す種族はそうやって生きてるんだから』
 と、満足そうに笑顔を浮かべる。
 それを見たレンリは、何も言えなくなった。
『君はサラが好きなんだろう?』
「ああ、そーだよ。でも、サラを手に入れたいなんてテメェに願わねーからな。ヒメカのこともそそのかすんじゃねーぞ」
 嫌味を込めて言い返してやったが、サージェイドは嫌味と思わなかったらしい。変わらぬ穏やかな表情だった。
『魔女の願いは魔女が決めることだよ。それとも、魔女の対価のことを気にしているのか?』
 サージェイドに懸念していたことを言われて、レンリは気を張った。
『価値は誰かが決めること。オレの存在を何であるか認識するのと同じだよ。そこに落ちている石だって、君の知らない世界では命よりも価値のあるものかもしれないよ?』
 と、サージェイドはレンリの足元に落ちている石ころを指さした。
「与太話はやめろ。オマエ、適当すぎだろ…」
 レンリは呆れ返って肩を竦めた。この化け物の話をいちいち真に受けていたら頭がおかしくなりそうだ。
 そろそろこの場を離れようと思ったところで、サージェイドが何かを思い付いた顔をして、つかつかと近づいて来た。
『ねえ!』
 伺い立てるような目付きで見上げてくる。
『君も最近の人間のことはよく知らないんだろう? 一緒に人間の街を見て回ろうよ』
「はぁ!? ふざけんな。テメェひとりで…」
 言いかけて、レンリは思い留まった。コイツひとりで街中を歩かせるのは非常に危険だ。それに、痛い思いをさせてしまった罪悪感が無いわけでもない。
「くそっ…。1時間だけな! 1時間経ったら帰れよ!?」
「はーイ!」
 機嫌よく軽い声で返事をしたサージェイドが、へらへらとした笑顔で両腕を振る。
 レンリは長い溜め息をした。
 やっぱ、コイツ気に食わねえ。